半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

遠隔診療はどうなったか?

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すごい人数でした。興味もっている人は沢山いらっしゃるんですね。

この前、第一回日本オンライン診療研究会をみてきました*1
遠隔診療については、以前にこのようなことを書いています*2
その1https://hanjukudoctor.hatenablog.com/entry/2017/07/15/000000
その2https://hanjukudoctor.hatenablog.com/entry/2017/07/16/000000
その3https://hanjukudoctor.hatenablog.com/entry/2017/07/20/000000
その4https://hanjukudoctor.hatenablog.com/entry/2017/07/23/000000

当院でも、2017年に遠隔診療導入を行いました。Medley社のCLINICSと契約し、実際にオンライン診療を開設したわけです。
しかし実際大して数もなく、顧客満足にもつながらなかったし、諸事情もあり*3凍結に至っています。

そして2018年の診療報酬改定をうけて、熟考した結果、凍結を継続……いやむしろ一旦契約解除してリセットしてもいいんじゃないかな、とさえ思っています。

* * *

オンライン診療研究会そのものは興味深かったんです。
うまく使えば、やはり強力な武器になったりするなあと思いました。
特に婦人科(若い女性は受診をためらいがちで、受診障壁を下げる意義は大きい)であったり、皮膚科(オンラインでも皮膚の視診はかなりできるし、薬剤のドロップアウトも少なくなる)などの領域での成功事例はとても興味深かった。

また、小児精神の発達障害外来などでは、診察室に行くことが困難な患者の、家でのリラックスした様子などが診られる。
これはむしろ対面診察「以上」の強みがある。
遠隔診療には、通院外来にはない良い部分も間違いなくあると感じられましたね。

ただ、勤労世代に対する生活習慣病、に関しては診療報酬上の縛りもきつい。
メリットが乏しい。
そこが自分のフィールドなんですけれども。

また、研究会のあり方に関して。
インフラに紐付いた研究会であり、学術的な側面は重視されないだろうな、とは推測してはいましたが、それにしてもそれぞれの発表がナラティブ過ぎやしないか?
とは感じました。

オンライン診療って、どちらかというとライフログバイス(体活動計とか)とも親和性が高く、やろうと思えば、ごっそりデータはとれるんじゃないかと思う。その意味では緻密な定量評価みたいなものを、少し期待していたんです。
そういう発表はなかったし、アウトカム分析とかにしても、定量評価がなさすぎたように感じました。
プレゼンテーションに関しても総じてスキルが低く、学会活動に慣れていない、もしくは引退された先生方の、主観的な意見発表という印象を受けました*4
これでは、非遠隔診療勢(要するに、普通の診療体制)を納得させることは、難しいと思う。*5

* * *

当院がクリニクスを用いた遠隔診療をやめた理由は、主に以下のとおり。

  • 2018改定。3ヶ月ごとに対面診療を必要。それなら3ヶ月内服で済む。遠隔診療の候補となりうる勤労世代の生活習慣病患者で、頻繁に採血しない方は3ヶ月処方で診てます。(もちろん薬剤コンプライアンスは確認しています)
  • 医療法上病院で遠隔診療は欠点が多すぎる。病院の外来人数は、常勤医師に比して人数の限界があるし、当院の外来も飽和に近いのが実情。人数は無限ではないなら受診間隔を伸ばし、外来の検査の密度を上げ、診療単価を上げる方向に努力しないといけない。遠隔診療は点数は低いので病院の方針に添わない。
  • 初期投資とランニングコストの契約条件からいっても、収益化が難しい。

もちろん、在宅診療に応用してマネタイズすることは不可能ではないが、その場合は、スマホ親和性が低いため、クリニクスでは、ちょっと具合が悪い。
もっと介護連携のグループウェアと親和するものが適していると思います。

* * *

厚生労働省としては、遠隔診療は、どの科でも、診療所でも病院でもどこでもできる「一般診療手技」なので、やみくもに導入すると、影響が大きすぎる。
現在の医療体制を崩したくない、という思惑もあるようだ。*6
確かにそうかもしれない。
基本的には遠隔診療はある種のマッチングデバイスだから、現在の完成された医療提供体制に対し、あまり大きな修飾を加えたくないのかもしれない。

ということで当院では残念ながら次の改訂まで遠隔診療は保留になりそうだ。
待つと、新たなベンダーも増え、価格もかなりこなれるだろうし。

しかし例えば財政難、人材難などで、現在の医療提供体制がクラッシュしてしまう事態。
近い将来これが起これば、上記の前提はくずれる。
そうなると制限がなしくずしに撤廃される可能性はある。

ともかく、現時点では、遠隔診療は効率性を上げるための秘策として、まだ温存されている段階だなと思ってます。

その他のBlogの更新:

このブログに引っ越してから、13本の記事を書いているようです。
んー。13本かー。
体感的にはもうちょっと書いてる気もしたんですが。

このブログ記事、割と「重」いじゃないすか。
読む方も大変じゃないですか。一記事の字数がありすぎる。

もうちょっと軽く行きたいもんです。
このBlogの「顧客」(ドラッカー的に)は一体だれなのか、それも、考察すべきところです。

ジャズブログ:

更新なし

*1:別の出張のついで

*2:新しいものに出会った興奮が若くもあり、今にして思えば苦くもあります。

*3:透析クリニックの院長が急逝されたため、急遽シフトの再編成を行ったわけですが、優先度が低いので凍結してしまいました

*4:いい発表もありましたよ。ただ玉石混交感がいなめなかった

*5:企業のプレゼンはさすがに質が高かったことは補足しておきます

*6:技官がいらっしゃってました。