半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

遠隔事始 その1

唐突であるが、今度遠隔診療をすることにした。

うちは、80床の地域密着型の中小病院である。とりたてて外来の人数は多くはなく(少なくもないが)目立った個性はない(と、自分では思っている)。集客については、今後の医療のトレンドを考えるとそうそう楽観視はしていられない。

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きっかけは、メディカルジャパンとかのITフェアーで、遠隔診療のデモをみたことだ。

デモをみると、スマホで、Skype的なインフラを使って行う診療は、スマホ世代には抵抗なく受け入れられるだろうと確信できた。だってSkypeFacetimeGoogle Hangoutとかと全くおんなじような感じだ。書き言葉はLINEのチャットのような形で残すことはできる。検査結果の画像ファイルの共有もできる。どうみても便利なのである。

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以前から、勤労世代は仕事に穴をあけて平日に受診しにくいという問題は少なからずあった。「受診したいんですけど、もう有給がないんです…」とかいって、ドロップアウトする人も少なからずいる。

*1

遠隔診療を何が何でもしなければいけない、とは思っていないが、おそらく、今後外来診療の一定数が、遠隔診療に切り替わる可能性はあると思ったし *2、先んじて使ってみることにより、問題点の抽出もできるであろうと思って、メドレー社の「CLINICS (クリニクス)」というインフラを使ってみることにしたのである。

契約は終了し、現在詳細を設定中である。

地方都市にある風采の上がらない病院としては、早いほうだと思う。

ちなみにメドレー社から営業やサポートの人は当院に一度も来ていない。メールとGoogle Hangoutで担当者といろいろ協議している。サポートとか設定はこれで全部済みそうである。

ま、いわゆるテレビ会議ですよね。これも個人的には初めての経験だったので、結構圧倒された。

世の中進んでるんだねえ……

そりゃまあ遠隔診療を売るなら、遠隔での対面でいいよなあと思う。そりゃそうだ。

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 今回私が導入する遠隔診療は、勤労世代、スマホ世代用のインフラであって、離島などの僻地診療とも、高齢者の在宅往診の補完用でもない。多分、これはこれで別のインフラを必要とするだろう。

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 ただ、個人的な事情を言えば、今現在自分の外来は完全に飽和しており、新たに遠隔診療を行う余地はあんまりないのである。外来、入院、院内の様々な会議で、今僕は自分の時間を切り売りしてなんとか仕事を回している。

 だから、今回新たなマーケットにアクセスする手段を得たが、現実的に応需する力は乏しい。

 かといって、院内の他の医師は、あまり遠隔診療に興味はないのも現状である。うーん、どうしよう。

*1:よく、ネットには「病院とか平日に行けるわけないじゃん!なんで休日やってないの?」みたいな書き込みが定期的に出現し、ものわかりのいいはてな民が「医療わかってねーなー」的なブクマコメントをつけてくださったりするが、単純に消費者側の都合を言えば、まあ無理もない意見ではあるとは思っている。勤労状況は、やっぱりいろいろシビアだもん。

*2アメリカではめちゃめちゃ普及しているらしい