前回の続きです。
現代では、高塩分食は、脳卒中・心臓病、腎臓病の原因になることが明らかです。
塩は健康障害の大きな問題であり、長期的には医療費の増大にもつながるはず。
これほど塩分は「よろしくない」わけです。
しかし、なぜ今までは高塩分食が淘汰されなかったのでしょうか?
我々はなぜ、高塩分の文化を維持したのでしょうか?
* * *
ここからは個人的な考えです。ある種与太話と考えていただいても構いません。
個人レベルで考えると、塩は、健康被害が甚だしく、有害です。明らかに。
しかし前近代においては、塩分摂取過多は集団のレベルではそれほどネガティブに作用しなかったのではないでしょうか。
高塩分による健康被害は、なんだかんだいっても、勤労世代の後期から老年期に出てきます。
たとえば縄文時代の平均余命は20代でしたし、我が国の平均寿命が50歳を超えたのは1947のことでした。
ですから、たとえば江戸時代であっても平均寿命は30代とか40代というところだと思います。
昔は初産の年齢も早かったですから、40歳でも孫がいてもおかしくない歳頃となります。
だから、50代・60代の死亡は人口の再生産には影響がない。
病気によって人口が抑制されることはないということになります。
高塩分食による疾病(多くは脳梗塞・出血、心疾患)は、昔の言葉でいう「廃疾」であり、前近代にはこのような疾患に対して有効な治療はなく、長くは生きられませんでした。今の脳卒中患者は胃瘻などの経管栄養などがあり、疾病後の余命が伸びましたが、そこに幸福な老後があるかといえば、疑問ではあります。病気が発生した時点で、集団から速やかに退場する*1。
食料によって養える人口の総数は決まっています。病気の人が速やかに退場する結果総人口の中の勤労世代人口比率が高まります。
また、塩分過多状態は、個人レベルでみると、多くの場合攻撃性や積極性は高まります。
その結果、労働力の嵩上げにつながることが予想されます。
結果的には、
- 勤労世代の労働力率を高め
- 老年世代の退場を早めることで集団は若く保たれる
これ、集団レベルで見れば、よくない?
為政者からすると、都合いいんじゃない?
例えれば、エンジンにニトログリセリンを入れるようなもの。
エンジンの寿命は縮むが、出力はあがる。
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そんな中によくある「日本人は勤勉で」という文言に関しては、塩分過多で、やや発揚型性格にチューンナップされていたせいではないのかな、と思ったりします。日本人の攻撃性が、アジアでの様々な惨禍に加担していたのかもしれない……とか思うと、塩って怖いかも、とか思うのでした。