どのような文明でも、黎明期には土地が開拓され*1たりして人口が増えて発展してゆきます。
成熟期に入ると単位面積当たりの収穫量は頭打ちになり、コストに対するリターンが逓減してゆきます。
さらに気づかれない形で生産性の低下が先行し、生産性の低下があるポイント(損益分岐点的なもの)を割り込むと、悪循環に陥り、かなり悲惨なスパイラルが発生し、最終的には環境を消耗させきって土地は荒廃し、文明は長い停滞期に入ります。
ギリシアの都市国家群、メソポタミア地方、北米アメリカ、南北アメリカ、イースター島などで、このような経過が観察されています。「文明崩壊」「人はなぜ人を食べたか」という本にはこのあたりが詳述されていますが、そもそもが私はこういう「世界の終り」に幼少期から非常な興味がありました。
おそらく一代で開業した父を背中にみているときに、自分が担うのは別の局面ではないか?ということを強く意識したせいだと思います。
ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マーヴィンハリス,Marvin Harris,鈴木洋一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 30回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
- 作者: ジャレドダイアモンド
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2013/07/12
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る
(以前にこのようなことも書いています)。
* * *
文明の衰退期の局面には暮らしたくないよなーとつくづく思います。
今日よりも明日の方が悪くなる世界。
今ある人口を将来は支えきれず、餓死や逃散が横行する。
最近強く感じるのはMR*2さんの業界はまさにそのような収斂局面にあるってこと。
先発品が構造的に出にくくなっている現状、ITの発達による対面面談の効用限界。
それどころか高コスト体質の製薬会社の重荷として*3、MRの社会的意義は、今後ますます逓減してゆくのでしょう。
このことは経済財政諮問会議での「骨太方針」というのにもはっきり示されていました。
日本の製薬会社の財務構造は極端に販管費に重点を置きすぎており、創薬の点で国際競争力を完全に失いつつある。*4。
財務的な構造改革が暗に促されています。
今は個々のMRの暮らしぶりは変わっていません。
しかし兆しはあり、大きな変動は起こっています。
数年以内に体制は目に見えて変わるでしょう。
個々の薬剤にスペシャライズドされた本社配属のMRはともかく、地方営業所のMRは、いつまでいるのか。
私はMRを「医療情報の中間流通業者」とみなしています。ここ近年の流通革命がこの分野にも起こっただけのことです。
営業所もどんどん集約され、地方の講演会なども、どんどんWeb講演会などに置き換わっています。
MRが自社製品をアピールするために配っていたノベルティグッズは、2018年末で廃止です。
考えてみたら「営業」で、夜の接待もない、価格交渉権もない。他社との比較も制限されている。ノベルティなどもない。これでどうやって売るのか。
うまい商売は、いつまでもは続かない。
でも、本気で足元が脅かされないと、なかなか動くことはできないんだろうなーと思います。
医者もよく言われる、「茹でガエル」の理論ですね。
* * *
今後の方向性として僕が考えるのは以下の通り。
- エージェント化。MR資格を保つフリーランスが、新薬がでたら1~2週間どっかで研修を積んで焼畑農業的に全国プレゼンしまくる。役目を終えたら契約終了。これは製薬会社としてはMRを外注化して固定費を抑えることになります。まずまず、現実的ですし、一部そうなっています。
- キュレーター化。例えば薬の知識が十分あるなら、卸会社に転籍すれば、他社比較ができます。「保険の窓口」みたいに、製薬会社に偏らない情報提供ができれば、医療者にとってはかなり便利です。ただしこれ、マネタイズは難しいと思います。今より該博な知識を要求される代わりにフィーは下がる*5
- ドラッカー流の「顧客」の再定義も面白い。今までの構造ではMRの顧客は医師でした。これを最終消費者である患者さんにすれば?そういう起業はないもんでしょうかね。
* * *
ただ、「MRやばいやばい」みたいに対岸の火事をみているつもりでも我々知的職業としての医療職の衰亡の方が、早いかもわからんよね。
AIとかにやられて。
また、いまある医療行為の多くが、不必要なものとしてバッサリ切り捨てられることもありうる。
本当に国にお金が無くなったら、ADLが落ちた方の存命は社会的に望まれなくなるでしょう。
倫理的にどうか…という問題が生じれば、倫理観の方がおそらく変わる。
いまだってゆるやかにそうなりつつあります。