半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

エナジードリンクの欺瞞

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エナジードリンク飲んでますか?

* * *

僕は、長らくレッドブル党でありまして、何かっちゃあ、あの甘ったるい飲料を飲んでいます。
場合によっては一日に2本3本飲むことも当たり前。

* * *

私は1974年生まれ、2000年卒の内科・消化器肝臓内科です。
いわゆる団塊ジュニア世代でありまして、多分今よりは競争率の激しい環境で受験勉強に臨み、医師になりました。

2000年に研修医になった時にはInternet上にWebsiteを作り、半熟ドクター(Half-Boiled doctor)という名前で、なんか色々書いていました。
それはともかくとして。

私が駆け抜けた時代は、割と若者が割をくった時代ではないかと思います。
いわゆるロスジェネ。
同世代の非医療関係の友人は、就職氷河期で苦労していました。
医療情勢も、私が医者として育った2000年から2010年の頃は、あまり雲行きがよくなかった。
全体としては、メジャー離れ、内科離れ、大学医局離れが静かに進行していました。
そんな中で、地方国立大学の消化器内科の医局に所属していた私。おまけに昨今叩かれている、大学の無給医。
いや、無給医ではないですよね。学費を払って仕事を「させていただいて」いたわけです。

田舎には内科医が少なくて。
なおかつ大野病院事件などもあったりして。
医療が信用されないというか、非医療者から不信の目を向けられる時代でした。
医療過誤訴訟も多かった。
そして、自分たちが一人前になると、今度はスーパーローテート制度が始まり*1、後輩の入局が二年途絶えたりして、医局人事が麻痺して、またそれでみんなデスマーチを乗り切ったりもしました。

とはいえ、楽しかったですよ。別に人間どこだって楽しめはするもんです。
ただ、プライベートの時間は制限されていたし、今の「働き方改革」的には完全アウトな日々でした。

* * *

2007年から野戦病院型の市中病院にでて、ずっと待機で呼ばれ続ける日々が始まりました。月に6−7回当直もしくは待機(オンコール)、それに加えて消化器救急(吐血とか)随時というハードな業務でして、その頃くらいから、30代後半、睡眠障害が始まります。
内視鏡センターのリカバリー用のリクライニングベッドで仮眠をとるのは当たり前でしたから、無理もなかったのかもしれません。*2
頭の中に薄靄がかかったようなのが常態で、医者はつくづく体力だよなあと思いました。
完全に飲酒の習慣がなくなり、15kg程度のハードなダイエットに成功したのもこの頃です。

その次の病院は、同じく市中病院でしたが、医師が多く役割分担が出来ていたので、専門特化して、前ほどハードな何でも屋ではなくなりQOMLはかなり改善したんですが、睡眠障害は改善せず、変な睡眠リズムのまま生活が続いていました。
この頃は本当に生活は荒んでいて、夜中の2時から6時までカラオケボックスにいって楽器の練習をしたり、眠れない朝4時にジョギングをしたりしていました。*3
この頃当直明けのどろりとした精神状態をなんとかしたくて、レッドブルを飲み始めるようになりました。

* * *

医学的に考えると、エナジードリンクに、そこまでの覚醒効果はありません。
ただ、カフェインを手軽に摂取できるので*4、それによる頻脈とか動悸感は、エンジンにニトロを入れるが如きのブースト効果のような錯覚があり、プラセボとして、自分のルーチンとして、飲用していたように思います。
エナジードリンクを入れることで、心の中のBダッシュボタンを押していたわけです。

ただ、常に疲れているので、だんだん量が増える。
レッドブルを一日一本、当直明けは2〜3本、みたいになって、ちょっとやばいと思いました。

* * *

今は中小病院の内科医師(肩書は理事長)ですが、実は今が人生で一番忙しいです。*5
エナジードリンクも飲みまくりの日々でした。

去年、少し思うところがあって*6エナジードリンクの常用をやめることにしました。
レッドブルのかわりに、職場のウォーターサーバーの冷たい水を飲むことにしました。
ごくごくと。
するとね、別になんの問題もなく働けるわけです。

やっぱり、プラセボ

今は、当直の日とか、まあまあ疲れているときはやはり飲むことはありますが、量は3分の1くらいに減っています。

自省しますと、やはり、本心では当直はしたくないんだと思います。
いつもと別のモードにスイッチを入れるために、この手のエナジードリンクを使っていたんだと思います。

その他のBlogの更新:

いやー…2週間空いてしまいました。色々忙しかった…というとアレですが(前から忙しかったですから)。
悪い癖がでました。大体過去数年間は年間数本しか書いていないのに、結構9月から割と密に書いたんで…
Web腎虚かしらん。

*1:ちなみに私は大学病院での研修を半年してから、地方の病院に赴任しましたが、実はこのとき研修医ではなく医員待遇だったんです。今思うと「怖っ!」と思いますが、そんな中生意気な私を導いてくれたローテーターの先輩、内科部長、院長には今でも頭は上がりません。

*2:唯一の救いは、この病院は超野戦病院型だったので、日中の外来の患者さんは決して多くはなく、当直明けですらない夜間業務でぶっ倒れていても、まあなんとか回ってたことでしょうか。

*3:個人的な感想をいうと、朝の5時台はジョギングで済みますが、朝4時台は不審者です。

*4:ほんとにヤバイときにはカフェインタブレットを試したことがあります。結構頻脈になって、キメてる感じがありました

*5:当直はそれほど多くはありませんが、日中の外来・病棟がとにかく忙しく、バタバタ走り回っています。合間に各種会議があるし。医師会理事もしているもんですから、その手の仕事も多くなり、気がつけば、一ヶ月家で夕食をとるのは1日か2日になりました。土日はたいてい何かあって出張しています。

*6:ちょっとだけ長生きしたくなったんです