半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

やっと消費税の意味がわかった

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広島駅の少し北のところでオクトーバーフェストみたいなことやってた。
2019年10月1日、消費税が8%から10%にあげられることになった。
数年越しで、紆余曲折あったが、やっとやっとの増税ということにはなる。
もちろん、ここに来るまでには、さまざまな異論反論もあるわけだ。

高橋洋一氏を代表とする、リフレ派*1からすれば、現在そこまで日本は赤字財政に悩んでいるわけではないし、消費税を導入することによって生じる経済の冷え込みは致命的だと主張する。
消費税10%は、オリンピックの前年、日本経済の「終わりの始まり」ではないか、という警鐘もかまびすしい。

* * *
そんな議論を、「そうはいってもなー」と、なんとなーく、消費税について、一消費者として僕は生ぬるく見守っていた。
きっかけはちょっと前に話題になったこの記事だった。
www.yutorism.jp

この記事の結論はともかく、これを読んで、やっと消費税の意味、というものに納得がいったのだ。

消費税は消費者が払うという格好にはなっているが、基本的には事業者が納めるべき税金である。
(ただし対手である顧客の方に転化することが許されているし、またそうなければならない)。
でも、基本的には事業税であり、法人税と意味合いは変わらない。

法人税との違いは何か。
要するに、法人税は利益(売上からコストを引いたもの)にかけられるものであるのに対し、
消費税は売上そのものにかけられる。
ということだ。

景気が良ければ、企業も利益を得られ、法人税収入は問題ない。
ただ、景気が悪く、企業の業績が悪ければ、法人税収は極端に落ちる。
だが、そういう局面でも、消費税は、それなりに確保できる。

要するに、法人税は「もうかったら納める」ものであるのに対し、
消費税は「儲かろうが儲からなかろうが、売上げがあれば納める」ということになる。

なーるほどなあ。
口さがなく言ってしまえば、財務省は、今後経済がどうあろうが財源を確保するために、消費税を導入した、ということになる。
逆に言うと、日本経済の隆盛、というものを信じていない極めてクールな意思決定のもとにこの税形態を選択した、とさえ言える。

消費税っていうのは、今後日本経済が体力を失って、法人利益が確保できない時でもコンスタントに税が確保できる。
この先高齢化で労働人口が減っていく局面において、日本企業が成長して行く目算がないのであれば、
法人税に頼っていては、多分どうにもならない。
昔みたいに国債を乱発するのも、自国内での引き受け先がなくなったら、おそらくデフォルト一直線だ。*2
だから財務省は消費税に転換し、最低限必要な財源を確保したいのだろう。

ameblo.jp
西野亮廣のBlogでは「税金の使い方こそしっかり吟味して考えましょうよ」と主張している。
 それは全くいい提案だし、大賛成ではある。
 ただ、歳出の多くは、生活保護費であったり、高齢者の年金、医療費・介護保険であったりする。
 ここはうまく使うといっても限界がある。どんなにうまくやっても歳出を絞るたびに何人か余分に死ぬのだ。

* * *

ちなみに、会社は、再投資などを行うことで、黒字を減らすことができる。
どんどん再投資を行い、フランチャイズを拡大していゆくことで、事業黒字は減り、結果的には法人税は減る。
古くはダイエーがその商法であったし、今でもソフトバンクなどはそうだ。
グループ全体で10兆円の売り上げがあっても、法人税は実質ゼロだ。
headlines.yahoo.co.jp

しかしAmazon法人税としてはアメリカが本拠地なので日本にお金は落とさないし。*3

その意味では、法人税は上手いことやる企業は節税できる可能性があるが、消費税はそういう操作で税金を減らすことはできない。

消費税が「公平な」税であるという言葉には、多分そういう意味もあるのかなと思う。

* * *

まあ、好況であろうが、不況であろうが一定の割合で税金を徴収されるわけだから、
消費税のない時代昭和の時代、不況時には税金を納めず、その財源をもとに設備投資を行い企業の競争力を取り戻し、好況への活力源にしていたやり方は、確かに使えない。消費税が導入されて、上向きの好況のベクトルが作りにくくなったのはそういう構造的背景もあるのだとは思う。

ただ、私は医療畑で、そうやって徴収された税を原資にして営まれる業態なわけだ。
消費税という存在を頭ごなしに否定することもできない。

ただまあ、医療に関しては、消費税導入時に医師会のおろかな先達が「医療に消費税なんて許せない」なんて言ってしまったために、医療では消費税を課せられず、コスト面で最終消費者という格好になってしまったために、消費税増税を消費者に転嫁できない。

病院の利益率の全国平均は1%である。2%の税率アップはもろに赤字転落。
 ま、そんなまぬけな業種で、仕事をしているわけなのだ。*4

* * *

(追記)

わー、なんかやっぱり時事ネタってすごいんですね。
たくさんの人に読んでいただきました。
いくつかブックマークで指摘いただきましたが、国債のくだりの部分は、多分僕の書いてること、間違ってるんだと思います。

ただ、以前のような赤字国債で歳出補填を、なんぼでもしていいか…というところは、
え?なんぼでもしていいんですかね?
MMT理論だとそうですけど(知ってますよ)
あれが本当に正しいかどうかは、今後歴史で証明されるしかないわけです。
準じても誰も責任とってくれないし(物価上昇が抑えられる限り…の付帯条件が崩れた時にはどうなる?)
あの理論に準じてアクセル踏む施策は僕は賛成しません。
確かに今プライマリーバランスもよくなったし、今国の財政は結構いいです。はっきりいって。
でも、超高齢社会の社会保障費は、正直これからが正念場ですからね。
国債で埋めるというシナリオはさすがにどっかで破綻すると思うので、国債をあてにするのは僕は反対です。
なんとなくですけど。

あと、大事なことですが、僕は消費税に賛成しているわけでもないです。
「あー、そういうことか」と得心がいっただけ。理解と納得はまた別ですよ。

あと「消費税は消費者が払っているんだろ」という批判は、そりゃそうです。いわゆる税負担論からいうと全くその通り。
ただ、企業会計の面でみると、こういう見え方をするという話。
税務署にお金として納める手続きは、企業がしている。
無印良品がやっている「内税方式」だと、その辺わかりやすいですよね。

あと、軽減税率のくそシステムははっきり反対。なんだよこれ。

*1:僕も心情的にはこの人の考え方には共鳴するのだけれど

*2:国内の引き受け先がなくなった状態で、海外の機関投資家が、じゃあ日本の国債どんどん引受けるヨ!となるというのは、ちょっと考えが甘すぎるとは思う。少なくとも利率は跳ね上がり、キャピタルフライトにつながるだろう。

*3:まあ、Amazonも再投資戦略で黒字にしないので、仮に国内法人であったとしても法人税は多分微々たるものだとは思う

*4:厳密に言うと、消費税改定の際に様々な診療報酬はポロポロ修正(かさあげ、もしくは原価低下)されて、赤字にならないように調整はしてくれる。まあしかし、この辺は結構微妙なところなんですよ。すべて一律に変わるわけではないので…