コロナ、コロナ、コロナ(Covid-19, SARS-CoV-2)……
感染者数の増加が止まらない。
病院や感染対応は、線形にしか増やせないけど、感染者の増加は指数関数的に増える。
ひとことでいえば、指数関数的な増加の恐ろしさを今我々は味わっている。
首都圏では、緊急事態宣言。
我々の住んでいる地方でも、ステージ4であったり、病床の逼迫が続いており、余談を許さない。
ワクチンが出回る2月、3月が、一つの節目だと思う。
できればそこまでは耐えしのびたいところだが、飲食業界からは悲痛な声が聴こえてくる。
youtu.be
今回は、一度目の緊急事態宣言のようには飲食店は自粛しないだろう。
いや、無理もない話で、しない、というよりはできない。
生き残っている飲食店も、2020年の間にストックを吐き出していて、自粛しようにももうその余力がない状況だと思われる。
国からの支援なんて、しれたもの。
複数店舗を経営しているけど大手FCじゃないところは、本当今胃がちぎれるような思いをしているはずだ。
我が地元は、もともとあまりはっきりした繁華街というものがない街で、もともと繁華もしてもいなかった。
が「寂れ方には底がない」という事実を知った。恐ろしい……
高齢化率もそこそこだし、みな、リスク回避行動はきちんととれている、という点ではむしろ喜ばしいのかもしれないけれど、飲食店にとってはかなり厳しそうだ。
テイクアウトの功罪
最初の緊急事態宣言のときはテイクアウトを推奨する流れがあった。
が、今回は通常営業をそのままテイクアウトにスライドする店は少ない。
店内飲食の感染防御を徹底して営業を続けたり、一部テイクアウトに切り替えたり、と、対策は多様化している。
テイクアウトと店内飲食のビジネスモデルは全然違う。
店内で飲食を提供する店が恒久的にテイクアウトを行う場合、儲けにもならないことが前回はっきりしたからだと思う。
店内飲食が、単行本を1500円で売っているものだとすれば、テイクアウトは、150円でその本のよりぬき部分だけを売っているようなものだ。
店を腐らせないために、仕事をまわすためにやっていたようなもので、儲けを考えるとばかばかしくてやってられないはずだ。
飲食店の競争というのは、他業種に比べると相当熾烈だ。
売りになる看板商品は、手を抜けない。つまり原価率も下げられない。
テイクアウトの場合、そういうお店の看板商品だけを抽出しているから、ちっともお店にとってメリットがないわけだ。
*1
今は、惣菜を買って自宅で食事する「中食化」にコンビニなどの小売店も対策を立ててきているため、前回の緊急事態宣言のスキームを継続させた飲食店はなかなか厳しいと思う。
テイクアウトではそもそもしのげない。
そこを主戦場とするテイクアウト専門店の出現*2もしくはコンビニ惣菜の充実化など、むしろレッドオーシャンになってしまった。
「ステイホーム」との戦略化としては悪いことではない。
ただ、一つだけ残念なことがある。
私は腎臓疾患や肝疾患診療をしているのだが、こういう患者さんにとっては食事の減塩が要諦なのである。
自宅での食事が増えることは、勤労世代のこうした患者さんにとってはいいことだったはずなのに、新規参入した「中食」の塩分摂取量は、むしろ外食のそれに引っ張られて、かなり味が濃いことだ。
塩分
以前に「塩の効用」というのを書きました。
hanjukudoctor.hatenablog.com
hanjukudoctor.hatenablog.com
ちなみに今回Blog内サーチしたら、2007年にも同じ論旨で書いてたりする。
日本人の平均塩分摂取は12g-13g。おそらくこれは平均の誤謬で、外食を繰り返す人は 15g/日くらいだろうし、基本外食をしない人は 6-8g/日なのではないかと思われる。根拠は省きますが、診療をしており、外でご飯食べない主婦の作ったご飯に、現役時代外食をしていた夫が「味が薄い」というパターンが実に多いから。
食事の塩分の濃さは慣れの問題なので、高塩分食に慣れている場合は、低塩分食を「味が薄く=まずく」感じる。
同じような食事を提供された場合に、他よりもほんのちょっと塩分濃度を上げると*3「味が濃く」つまり魅力的に感じる。
このメカニズムとチキンレースの果てに、日本の外食産業ではは、じわりじわりと塩分濃度は上昇気味。
WHOの提唱する減塩推奨に逆らって、塩分摂取量は下がる気配は乏しい。
本当に外食の塩分量は増えているのか?
実は明確なエビデンスはないのである。(自分の実感とか体験に限られている)
少なくとも塩分摂取量が下がった証拠も、明確に上がった証拠はみつからなかった。
(特定の飲食店の攻撃になるかだろうか?過去のレシピ本や食品の成分表示などを遡って論文化すれば、栄養科や家政科の学生の卒論にちょうどいいテーマだとは思っている)
インスタントラーメン業界の塩分量
参考までに、最近の即席麺業界を見てみると、
マルちゃん正麺や、明星チャルメラなどの袋麺が、だいたい一食400Kcal台で5.5g〜6gくらいの塩分量である。
(具体的には 麺に含まれる塩分2g前後、スープが3-4g程度という内訳になる)
袋麺については、この塩分6gラインは、まずまず死守されている。
最近日清のCMで目につくでた「濃厚!これ絶対うまいやつ!」シリーズも、塩分は6g以内におさめていた。*4
ところが、カップ麺になってくると話がかわってくる。
カップヌードルはやや小型のカップなので、塩分4.9g 350Kcal だが、最も歴史が古いこれをリファレンスと考えよう。
最近でているカップ麺はどれも、塩分量が凄まじく多い。 6gの不文律を超えて、 7g台に至るものが結構ある。
スーパーでざっと見て、一番多いのに 7.9gというのがあった。ほぼ8g!*5
さすがにこれを3食食う人はいないとは思うけれど、もしそうすれば 24g。
昔の長野県などでは、漬物たべまくってこれくらいの塩分摂取はあったらしい。
そういう場合40台とか50台で脳卒中になっちゃう人も出てくる。
減塩政策で、そういう極端な高塩分食はなくなったはずだが、外食文化が「中食」という形で家庭に入ってくれば、むしろ日本人の塩分摂取自体はじわっとあがるのではないか、と危惧している。*6
できれば、コロナ「Stay Home」のときからの外食産業の「中食」への攻勢の中で、減塩に留意するような政策がとれたらよかったのに…と思うが
まあ無理だよな。厚生労働省がコロナでてんやわんやだったわけだし、そんな余力もあるわけないし。
また、非常事態でアドレナリンが出まくっているような時には、高塩分食が好まれるような気もするし。
まあ、高塩分食がもとで、攻撃性が若干増えて、家庭内がギスギスしたり、なんてこともあるかもしれない。
低塩分で、まったり行きたいものだが、実は僕自身も、例えば当直中前後は自覚的に高塩分にしてテンションをあげてゆくタイプ。
絶対からだに悪いと思う。
*1:テイクアウト専門でやる場合は、割とクールなコスト計算のもとで採算性を出している。だから、テイクアウト専門の支店を出すというのは、戦略としては正しい。両方やると虻蜂とらずになってしまう
*2:我が街でもテイクアウトのデリが目につくようになった
*3:あまり明確塩分が多いものは塩辛く感じてしまう
*4:もっとも、これには少しトリックがあって、このシリーズは、324Kcal とサイズは少し少ないが、塩分は5.9g。おそらく袋麺は単身世帯よりも、ファミリー層をターゲットにしているために、健康に留意する層に嫌われないために一食あたりの塩分を6g以内に収めるという鉄則があるのだと推測する
*5:もちろんスープを残せば8g摂取することはないが、何も考えずスープ飲み干す人もいるわけだから、おそろしい…
*6:インスタントラーメンの塩分については一度まとめてみようと思う。面白そうなので。