半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

ポストコロナのMR業とは

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2013, 金沢

コロナウイルス(Covid-19, SARS-CoV-2)第二波、まったなしですね……
住んでいる福山市でもクラブイベントの出席者に感染者が発生したりしました。
クラスター感染!
濃厚接触患者は200人以上ということで、国からクラスタ対策班にもきてもらい、のべ200人くらいにPCRを施行。
幸い、現時点では思ったよりも感染者は少なく重症者もいないようで、一安心ではあるけれども、さすがに警戒体制とはなった。
感染者は若い人が多く、コンビニ店員や飲食店員など、感染のハブになりうる人が感染している。
Go To トラベルキャンペーンも始めることだし、この先どうなることやら……
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MRさんの面談

製薬会社のMR(メディカル・リプリゼンタティブ。まあ営業みたいなもの)の対面も、コロナ以降完全になくなっていたのだが、
最近は、テレワークのデバイスを使ったチャット形式での面談の要請があって、2、3受けてみた。

今の所、あまり感触はよくない。

会社によって使うアプリが違う

 社内規定によるのだろうが、会社によってMicrosoft TeamsとかWebexとか指定してくる遠隔会議ツールが違う。(Zoomはさすがに少ないが、一社だけあった)。当然こちらの方で、それでけアプリをインストールしないといけない。三つ目くらいになると、だんだん「なんでこんな、やらなあかんの?」とか思ってくる。
 そして、これは完全にこちらの問題なのだが、診察室に置いてある病院のPCは低スペックで、音がとにかく割れる。
 使用環境が悪いと、面談時間の満足度はやはり落ちてしまう。
 MRの接遇の基本としては「医師を不快にさせない」なのだろうけど、現状は今までのMRのありようのスタイルにそぐわない気がする。

すっぽかしのリスク

 面談時間は、外来や病棟のICの合間にやっている。
 もちろんアポイントは取っているのだが、アポイント通りの時間にならないことはよくある。
 それは医療が、スケジュール通りにいかないからだ。
 少し早めに始まったり、初診とか、外来の患者さんが入院になるなどで予定外の仕事が発生すれば、逆にどえらく遅れたりもする。
 あまりにひどく遅れそうだったりする場合は一声かけて後日アポにするが、30分くらいならMRさんは待つことが多い。

 ところが、ひどく忙しい日、連絡もなくMRさんの遠隔面談をすっぽかしていたことに、翌日になって気づいた。
 いつもは「実際に待っているMRさんの姿」がリマインダになっていたのだと、その時に気づいた。

プレゼンの時間

 MRさんのプレゼンは、普段からiPadなどのタブレット端末を用いて自社のパワーポイントを見ながら解説する、というスタイルが多い。
 テレ面談も基本的には同じだ。
 だが、PCを通した場合、丁寧なMRの面談のものいいが、冗長に感じられてしまうのだ。
 説明動画とかで冗長な場合、1.5倍とか速度をあげられるけど、対面だとそういうわけにもいかない。

 多分いままで対面の場合、話が長いと「それで?」とか「結論は?」とか次を促していたり、もしくはこちらの顔を読んで、MRさんがプレゼンを端折ったりしていたんでしょう。テレ面談だと、その辺の機微が伝わりにくいらしく、説明にイライラさせられることが多かった。

 MRさんは医師に対して「医師を不快にさせない」よう「過剰に丁寧」に接遇するスタイルが身についている。
 しかしそれがテレワークのような率直なコミュニケーションツールに本質的に馴染まないのではないかと思うのだ。
 ICTはダイレクトなコミュニケーションの方が馴染むんだと思う。ただ、そういうスタイルは、今までのMRさんの行動様式と真逆である。

先がない

 MRの対面は「情報提供」という名目で行われている。
 が、その実、ある程度医師と面識を得て、地域の講演会に来てもらうきっかけを作ったり「その先」が目的になっている。
 もちろん、情報提供そのものの大事なミッションではあるのだけれど、でも情報提供だけが目的であれば、もっとストレートな媒体はあるはずなのである。やはりMRの面談には、別の目的があるのだ。
 MRの面談はぶっちゃけ「ドア・オープナー」たま。ナンパテクでいう、道を訊くふりをして話しかけるきっかけにするやつ。もしくは「今度飲みに行きませんか?」といって口説くきっかけにするやつ。

 しかし、対面の面談にしろテレ面談にしろ「ドア・オープナー」の目的である肝心な講演会がないわけだ。そりゃ面談も身が入らないというか、ちょっと別のものになってしまうのだろうなと思う。

* * *

以前からMRさんは情報の中間流通業者としての存在だと論じてきた。
hanjukudoctor.hatenablog.com

これはコロナとか関係ない時に書いたものだが、コロナによって、全国規模の講演会も学会も封じこめられてしまった。

情報の流れを切るわけにはいかないのでICTを駆使してWeb上で学会発表、シンポジウムを開催することになる。実際そうなっている。
製薬会社主催の講演会もウェブベースで開催されているが、製薬会社別のWebsiteに誘導会員登録させるやり方は、なんとかならないだろうかね。もう一度いいますけど。

いずれにしろWebフォーラムが主体となるのであれば、地域に配置していたMRは、本質的に不要となる。
今よりもWeb面談に特化した専属のMRがコールセンター的な役割を担うのかもしれない。
僕たちにしても「この薬使ったことないけど教えて」とすぐ教えてもらえるなら、その方がありがたい。

* * *

MR側からみると、今のこの現状はかなり憂慮すべき環境であると思うが、例えば、弊院の先生方としては「いやーMRさんの面談がなくなって快適ですわー」という感想をもらっている。当院はベテランの先生が多く、例えば臨床研究とも無縁で新薬に対する興味も低いというのもあるから、基幹病院ではもうちょっとMRは求められているとは思うが、これも現場の声の一つであると思う。

*1:個人的な行動としては、ジャズの場に行きジャムセッションは続けていますが、むしろ外食の危険が無視できないほど高くなったと思う。自宅の食事か、コンビニ食を余儀なくされた。