半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

コロナ禍 手段と目的の履き違え

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めっきり外出しなくなった
コロナ、コロナ、コロナ……コロナウイルス(COVID-19, SARS-CoV-2)。

今年のGW=ゴールデンウィークはガマンウィーク。
誰か知らないがうまいこと言ったもんだ。

* * *

ちょっと前に、日本のコロナ対策は「ハイコンテクスト社会」の文脈で支えられていると書いた。
hanjukudoctor.hatenablog.com
はっきりいって、敗戦以後、日本政府は一貫して強大な権力を持つことを許されていない*1から、トップダウンで有効な政策を決める権限も、また能力もない。そんな中で死亡者の数を考えると、日本は今の所よくやっている。
GWまでの緊急事態宣言も、まあ遅い早いはあれどまあやらなきゃいけないことを、やってる。

ただ、実行権限が曖昧なために、いわゆる「日本的なムラ社会」を利用した、同調圧力と相互監視を基調とした、陰湿な草の根隣組活動で、活動を縛っている。
ボトムアップ式の外出自粛といえば、まあそうだ。

ただ、ここにきて「自粛警察」みたいな人がやたらと他人を怒鳴りつけたり張り紙をしたりというボトムアップゆえの弊害が目立ってきており、社会はギスギスしているようだ。
うちの家族も、仕事から帰ってスーパーで買い物をする時にマスクをしていなかっただけで、後ろにならんでいるおじさんに「なんでマスクしていないんだよ!」と咎められたりしたそうだ。
ああそうか短期間でもう市井はこんな感じにまでなっているんだ、とびっくりしたそうだ。
多分大都市圏ではそれ以上の相互監視と攻撃が当たり前になっているのだろう。

こうした「自粛警察」の人たちは、自分の嗜虐心を満足させるためだけに「自粛」という錦の御旗で他者を攻撃しており心はすでにダークサイドに落ちている。*2
blog.tatsuru.com
最近の内田樹の論考にはあまり賛成しなかったが、これは腑に落ちる。
まさか内田翁も「こういうことが起こるのは政府が悪いからだ」とは言わないだろうかな。*3
こういう「空気」で人を攻撃する習性は日本人の宿痾である。平和な今でさえこうなのだから、戦時中の大政翼賛体制の同調圧力って、さぞかし息詰まるものだったんだろうね。
はだしのゲン』の一巻の描写って本当だね、と自粛警察を見ていると納得できる。やれやれ。

* * *

ただ、我々としては、ちょっと冷静にならないといけない。
手段と目的の履き違えは、特に日本では起こりやすいのだ。
目的は、このコロナウイルスの感染による被害を減らすことだ。
その手段が、Social Distancingであり、8割減であり、三密を避けることだ。

しかし、往々にして、手段そのものが目的となる。
自粛警察の人たちは、他人にSocial Distancingを守らせることに執心しているけれど、すでに当初の目的も忘れて、他者を攻撃するという行動そのものに目的がすり替わっている。
「8割減」も、わかりやすい原則という意味では当初効果的ではあったが、あくまで目的はコロナの新規感染を減らすためであり、そのための一手段に過ぎない。
業態ごとにきめ細かく可否を決めて、「一律8割」は変更する、などの作戦変更は十分ありだと思う。

ただこの国では一旦決めた「形」を変えづらいのだ。
初発の意思決定のスピードもこの国では遅いが、実は、そこはまあ我慢できる程度の遅さだ。
実は一旦決めたものを捨て去ることが、この国ではとても時間がかかる。
日本は断捨離できない国なのだ。
だからこそBCG予防接種などもいまだに続けていたことがひょっとして効果があるのかもしれないけれども。
一度決めた「型」を崩したり変化させていくのが、とてもヘタなので、おそらく4月上旬までに作られたフレームワークを、簡単に変えることは難しいのではないかと思われる。

さて、これからどうなるか。

* * *

ちなみに、ゴールデンウィークは僕に関する限り、ずっとガマンウィークである。
hanjukudoctor.hatenablog.com
自分の日記を振り返ってみると、これは基幹病院にいた頃。GWは仕事が止むことはなかった。

その後実家の病院に戻り、しばらくはディズニーランド、北海道、沖縄とか家族旅行をしたりした時もあった。しかし今は家族の事情もあり長期の旅行にも出かけられないので(ついでに犬も飼っているし)盆正月とGWはむしろ毎日一度は病院にでむき、入院の人の指示を出したり、「かまど番」みたいな仕事をやっている。だから、あんまり例年と変わらないっちゃあ変わらないな。

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家にずっといる割に、有意義な重めの本をどんどん読書していく、という風にはならんですな。
『ゴッドタン』とか『相席食堂』をアマプラでだらだら見ています。
「受験は要領」は自分の受験生時代を振り返った自分語り。今こういう受験本でオススメはなんなんでしょうかね。

*1:誰に?と言われると、一つにはアメリカであり、もう一つは中国だろう

*2:なんだか藤子不二雄FのSF作品集にある『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』を彷彿とさせる話である

*3:言わないでいてほしい