半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

コロナ お酒とタバコ

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ずっと家にいるので、我が家の愛犬とちったぁ仲良くなりました。
コロナ、コロナ、コロナ……コロナウイルス(COVID-19, SARS-CoV-2)。
非常事態宣言はそれなりには奏功していて、新たな発症患者は少し減っているのは間違いない。
ただ、出口戦略。ここからどう持っていくのかは、かなり難しい政治判断が求められるのだとは思う。

多分「人命第一」という建前を最後まで貫徹するなら1年以上の耐乏生活になる。
でも、耐乏生活も度を越して日本経済の屋台骨がぼっきり折れると、中長期的には多分もっと人が死ぬかもしれない。
アメリカも州ごとで方針が様々で、揺れていますね。トランプは経済を優先させたいみたいだし。

日本では誰がこの「トロッコ問題」にケリをつけることができるんだろう?
みんなが「この人の決定ならしょうがない、恨みっこなしだ」と思える人がいるだろうか?

うん。いない。
ただ、日本人は「死者を批判しない」という民族的なピットフォールがあるので、
意思決定をして「みんなゴメン!責任とるわ」といいながら自死(もしくは客死)でもすれば、多分それでおさまる。
Win-Win、ではなくLose-Lose戦略。
逆にいうと、意思決定を下し、死にもせず幸せな老後をその後暮らす、のはかなり難易度が高いと思う。

美しい国、ニッポン。*1

* * *

自分の周りにもあやしいケースがぽつりぽつり出てきている。
職員にしろ患者さんにしろ。保健所にPCRをとってもらう事例がぽろぽろある。
 幸い今のところ陰性が続いているのだけど、結果がでるまで気が気ではない。
 そして、いつかは陽性がでて、短期間にしろ病院の封鎖を行わなければならない日は、多分くるのだろう。

コロナは「コロナでーす熱出てまーす」と正面からやってくる症例よりも、斜め後ろからやってきて気がつくとコロナ、という症例が怖い。

* * *

一臨床家として純粋に疑問なのは、なぜ日本では重症患者・死者の数がここまで少ないかだ。
二百人以上の死であるから、もちろん少ないとはいえないのだが、アメリカやヨーロッパと比べたら二桁違うのは、やはり少ない。

Social Distanceとか、靴文化とかいうけど、それは、感染の広がりに関する因子である。
PCR検査をしていないからだとかいうけど、それは無症候や軽症の発症者の把握の有無に関する因子。
全く医療に捕捉されずに亡くなることが少ない日本では、重症者・死亡者までいった人が全く把握されていないとは考えにくい。*2
そもそも把握が甘いと思われる日本の感染者数総数を分母としても、重症者や死亡者はかなり低率なのだ。
分母はもっと多数かもしれないので、そうなると重症化率・死亡率はさらに下がる可能性だってある。

一体なんなんだろうね。
根拠はないけれど、個人的にはやはり何らかの交差抗体があるんじゃないか。
ぶっちゃけ、似たようなウイルスに罹ってたことがあるんじゃないのか、と思ったりもする。
だから、もしアビガンとか、ちょっと効く薬を積極的に使って死亡率を今よりも50%程度は減らせるのであれば、腹をくくって経済優先に舵を切る選択肢もあるかなーと思ったりもする。(あくまでも専門家ではない人間の戯言ではありますが…)


* * *

我々の業種はテレワークにはなりにくいので毎日仕事場(病院)には出勤しているのだけれど、それ以外はほぼ自宅にこもっている。
うちは四人家族であるが、幸い家族がずっと自宅で過ごしてもそれぞれのパーソナルスペースがゆっくりとれる程度には広く、今心の底から一軒家を建てておいてよかったと思う。
昨今のミニマリズム上等の文明社会の観点で見れば、家みたいな重厚長大なものにお金を使うのはダセエみたいな考え方になるのだが。
今にして思えば、その人固有のスペースはやはりあってよかったなと思う。我が家族は必要とするパーソナルスペースがかなり広いのだ*3

* * *

ところで、ほとんどの人が引きこもりになっているけれども、アルコールの問題飲酒の方々にとっては、私が診療している限り、このコロナ禍は悪影響がひどいような気がする。だいたい8割くらいの人が酒量が増えている。

理由はいろいろあるけれども…

  • することがない。
  • 車の運転が不要なので、家で腰をすえて飲める
  • 社会不安。メディアをみていても、社会全体の不安が喧伝されており、ストレスになっている。
  • 経済不安。大なり小なりの職種において業績の冷え込みが予想され、これも将来不安になる。
  • 孤立化。Social Distanceそのものはやはり寂しいため、飲酒家にとって悪影響にもなる。

テレワーク中の飲酒は可能なようだが、これは飲酒コントロールという意味ではかなりまずいと思う。日常診療でも、昼からお酒を飲んでいる人は、依存症に陥りやすいのだ(コントロールできなくなるから。昼は我慢して夜飲むというのは、当たり前っちゃ当たり前なのだが、なんらかのコントロールを意味する)
これから不況、失職する人もでてくるかもしれないが、そうなると飲酒の問題はさらに増えるだろう。
家に篭っている今の時期にはおそらく隠蔽されていると思うが、外出自粛が撤回されたときに、飲酒問題は大きな公衆衛生上の問題となって立ち上ってくるようには思う。
やだなーと思う。もう今から憂鬱だ。

* * *

ちなみに、喫煙はどうか。
私はかなりタバコのことはネチネチと外来で禁煙を勧めるタイプの町医者なのだが、喫煙はコロナの重症化、死亡リスクを押し上げるので、ここぞとばかりにアピールして禁煙をすすめている。*4
が、今のところ禁煙に応じる姿勢は、全体としては乏しい。実感として10%もいない。
現実に重症化して死亡すると、喫煙者の数はへるだろうね。
コロナがSmoker Removerとして作用する可能性はあるのかもしれない。
ただニコチン依存という薬物依存だから残った喫煙者はやすやすと禁煙はしないんじゃないかな。
ガリア戦記にてカエサルのもとで歴戦した兵士のように、少数精鋭化するのかもしれない。
手強い。
これまたやだなあ。

しかし今年の4月からタバコに関する法令が改正され(健康増進法)、多くの飲食店でも喫煙が厳しくなる。
今は飲食店そのものが休業しているから、それで困ることはないわけだが、外出自粛が解けたあと、喫煙環境は一段と厳しくなるはずだ。
また、例外的に零細・小資本の飲食業については、経過措置という名の猶予が設けられていたけど、多分この飲食業不況で、そういった店の多くが退場するかもしれない。そうすると、最低でも分煙の店が増えるので、嫌煙の私には過ごしやすいことにはなりそう。
ただ、その分路上喫煙が増えるかもしれないんじゃないかと思っている。

その他のBlogの更新:

半熟三昧:

『ひとりでしにたい』カレー沢薫 - 半熟三昧(本とか音楽とか)
『日々我人間2』桜玉吉 - 半熟三昧(本とか音楽とか)
クイーン・コング - 半熟三昧(本とか音楽とか)
えっと、あの、ちゃんとした本も読んでいるんですよ(少しは…)
アウトプットでまとめ直すのが、今難しいんですかね。さらっと紹介できるものにいっちゃいますね。

ジャズブログ:

*1:安倍総理は、今までの政策プロセスでそういう信頼を醸成することに失敗しているので、無理。もしこういった聖断が下されるとすれば、やんごとなきお方のお言葉以外は無理じゃないかと僕は思う。あ、やんごとなきお方は生死は問われませんよ、もちろん。日本国民として生きることをそもそも許されていないのだから

*2:これは町の中小病院で臨床をやっている自分の感覚でもそうだと思うのだ。少なくとも不審な肺炎や多臓器不全が増えた印象はない。

*3:オール隠者気質笑

*4:おっと、しかし今飛び込んできたニュースによると喫煙者はコロナ感染率が低いという知見もあるようだね。理由はわかっていないが、ニコチンは感染リスクは下げるかもしれない(バイアスかもしれない)。けど、慢性の喫煙による肺障害は重症化・死亡化リスクをあげるという事か?まだ確たるデータではないのでちょっとわからないが、臨床というのはイデオロギー通りにはいかないのが面白いところだ。…というか、もしこれが真実なら、喫煙者で、今回のコロナが怖くて禁煙した人こそが最もリスクが高いことになる。なんて悪魔的なウイルスなんだ…