半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

ボーナスの不満

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ボーナスの査定が終わって、夏のボーナスの支給も終わった。
うちの医療法人と社会福祉法人、職員500人くらいいるので、全員のボーナスをチェックしないといけない。

人事給与システム、定期昇給などはある程度自動化しているが、ボーナスについては、新しいシステムもなかなか入れられなくて、結局10年前くらいから同じようなやり方のままだ*1
前年度の業績と、算定基準*2をたたき台に、あとは幾分かの上下を、施してゆく。完全にアナログだ。

情意の部分でも「この人よく頑張っている」「この人はちょっと…」というのは見える。
ただこれも、自分が日常的に接していない部門の場合は、よくわからない。
所属部門長と相談して決めたりもする。

* * *

自慢するのもなんだが、うちの病院の職員、平均すると、結構モチベーションも高く、よく働いてくれる。
いい人も多い*3

だから、ボーナスとかの考査の時には「みな、頑張ってるよなー」と思うし、ボーナス、たくさんつけてあげたいな、と心情的には思う。
だけど、結果的にそんなに前年度から変わらない、いまいちぱっとしない表になる。
正直、申し訳ないな…という気持ちにもなる。

* * *

ボーナスだって給与。人件費だ。
全体で考えると、まず総額。そしてその配分ということになる。

病院って、めっちゃ頑張ったって、めっちゃ新たな取り組みをしたって、売り上げが爆発的に上がるわけでもないのだ。

大手企業とか、一人一人の仕事のレバレッジが効きやすい業種であれば、一人のスマートな問題解決が、何億という売り上げ増加に繋がり、もしくは何億ものコスト削減につながったりする。

そういう会社では、報奨金としてのボーナスの意味が大きいと思う。
任天堂ファミコンがバカ売れした時にボーナス28ヶ月分でた、という伝説があるよね。

対して、病院、医療系というのは、一人一人の地道な取り組みを積み上げ、医業収入をチリツモで積み重ねる。
それで、やっと利益率1〜2%の世界である。*4
各人、それなりに頑張っているし、営業職のように、個人の売り上げが10倍違う、なんてことはなかなかない。
そういうところでは、ボーナスを年ごとに、乱高下させることは、なかなかできない。

* * *

次に、分配の問題である。
職員間で、どうやってボーナスを按分するか。


以前にもボーナスについてちょっと書いたことがある。

hanjukudoctor.hatenablog.com

下げられることを容認しないと、ボーナスって上げられないのである。
「頑張っている人にはボーナスたくさん出してあげたい」ということは、裏返すと、
「頑張っていない人、頑張っていない…ように見える人のボーナスを下げる」ということだから。

ではその「頑張り」をどうやって評価するか?
評価方法が公平でないと、厳しい上下動に人は納得しない。
その評価方法には客観性と公平性が求められる。
だが、それはなかなか難しいのだ。*5

「新たな取り組み」は病院の組織を改革するために必要なことだが、マネタイズには程遠い。
仮にローンチしても、病院の売り上げがめちゃくちゃ上がるわけではない*6

* * *

でもまあ、私もボーナスをもらっていた時期もあるので、もらう側の気持ちもよくわかる。
「俺めっちゃ頑張ったやん!」と思っていて*7、全然ボーナスの額に変化がなかったら、むしろ下がったりしたら、がっかりするのもわかる。

だけど、人は、自分の頑張りと、ボーナスの額の増減の額の乖離を、生理的に理解できないと思う。
例えば、指数関数的な増大を体感できないのと同じように。

あ、補足しておきますけど、うちの職場でボーナスに対する不満が渦巻いているわけではないですよ。
むしろ僕が不満なんですよ。

*1:現行制度のUpdateがなかなか進まない属人的な理由がある

*2:基本給に職種別の掛け率をかけたものを下敷にして、あとは労働勤怠。遅刻欠勤。有給休暇をとることは評価には影響しないが、例えば病欠などの際に、当日有給発令というのは当院では認められているが、それについては若干のマイナス評価を行っている

*3:全員いい人だったらいいのに…とは思うけどね。

*4:これは一般論であり、うちはもうちょっといいですよ

*5:だから、当グループでは、そこのところで恣意的にならないように、勤怠の評価が評価の大勢で、それ以外の評価は微々たるものだ。

*6:日本のしみったれた、失礼、医療制度では、新たな取り組みはむしろ関連コストを押し上げ、収益性の低下につながりさえする。質と集客には繋がるのは確かだが、単価は上がらないのだ

*7:そして大体8割くらいの人間が、がんばった、と思っている