半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

選挙

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参議院選挙が近い。

結局、今回の選挙の争点はなんなんだろうか、というのが、今ひとつわからない。
今ひとつ盛り上がってもいない。*1

争点が「年金」と言われると、違和感がある。
そりゃ確かに、このまま「人生100年時代」が当たり前、そこまででなくても80歳までが当たり前であれば、社会保障費は当然枯渇する。
2000万の貯蓄が必要…と具体的な数字を挙げられると、確かに絶望感は増すだろう。
ただ、年金の構造的な問題は10年前から明らかだったし、何一つ新しい話ではないと思っている。

でも、ない袖はふれない。
勤労世代が親世代に捻出できる社会保障費は、誰がどうみても限界だ。
積み立てている年金費用も取り崩しながら今後も運用してゆくのだろうが、我々が年金受給世代になった時に、年金積立が空っぽになっていることは想像にかたくない。

どうせ、団塊Jr.世代は割を食うことがわかっている。
でも、それにしても、割を食うにも限度があるとは思う。

野党は、年金政策について『給付増やします』なんて簡単にいいますけど、結局『床屋政談』のようなもので、財政事情とか、基礎知識がない素人が、適当な事を言っているようにしかみえない。
内情を知っている人間は、そんな大言はできないのだけれど、選挙期間中は、国民に苦言を呈するようなことを言ってもメリットもないから黙っている。
そういうからくりも、民主党政権の時に露呈してしまったから、野党のビジョンに対して、有権者は醒めている。

多分、年金給付を月に5000円上げて、年金を10%〜20%上げたら、その分インフレで物価が10〜20%上昇すると思う。それはそれでフェアなのかもしれないが、多分給料はそれほどは増えない。じゃあ若者が死ぬな。
僕が年金給付世代の頃は、年金は給付はされてるかもしれないが、例えば、映画館 5000円、パン一斤1000円とかになっているかもしれないと、諦めている。*2

自民党の釈明会見とか政治家決定のプロセスについて、法的手続きの不備など、私も、思うところはたくさんある。
ただ、内閣府によってグランドデザインを示し、経済政策を決定していくという現在の流れは、複雑すぎて意思決定のスピードが落ちた日本社会システムにとって、ある種のうまい解決策だと思っている。
スピードのかわりに民主主義のプロセスを省いているのは、事実だ。

コンピュータでいえば、今の日本社会はスパゲッティのようなコードで作られたプログラム、モジュールが肥大化したために、システムダウンが頻発しているような状態なのだから、軽いパッチを当てないと、稼働しないのだ。

どうも日本人は、制度の断捨離ができない。
平安時代摂関政治から院政になったように、もしくは江戸時代の老中合議制から側用人制度のように、肥大化して意思決定が膠着した状態になると、そのシステムクリーンナップではなく、法律外のシステムをひょいっと作ってしまうのは、歴史的なお家芸ではある。

今の「内閣府」もそんな感じの制度だ。
省庁の上位構造の意思決定機関を作ったことで、戦術レベルの意思決定が迅速になった。

安倍首相は、国民に対するアピールとか、説明能力というのは優れていないが、政策集団としての内閣府システム作りと、国連の常任理事国以外のアジア諸国へ地道に外遊していることは、もっと称揚されていいと思う。*3
こういうのをきちんと報道されないのは、日本のマスコミが悪いと思う。

内閣府の意思決定は、きちんと外部に示されている。
www.kantei.go.jp
本来、政策論議を行うのであれば、現政府のこのアジェンダを読み込んだ上で議論するのが筋だが、政見放送を見る限り、これすらみていない政党が多いと思われる。
それでいいのか?と思うけど、「未来投資会議」という言葉でピンと来る人は、一部の人間に限られているのだからしょうがない。
有権者に伝わらない言葉を言っても、選挙には勝てないのだろう。
政党政治は投票する側も、される側も、単なるポピュリズムに堕してしまった。
政党政治というシステム自体が、上述したように、もはや制度疲労を起こしていて、うまく機能していない。

では、どういうシステム作りが必要か、ということを議論する必要があるのだろうが、
そういう議論は、日本では難しいんだろう。
革命も起こりそうにないし。

* * *

社会保障費については、やはり額の上げ下げではなく、分配だと思う。
要介護4・5の人たちの介入制限(胃瘻・経管栄養、TPN、透析、ある程度の高度医療)は、そろそろだれかが
手を下さないといけないと思う。
それはそれで、不幸や涙も生むだろう。
大ナタをふるった政治家は、おそらく政治生命を賭する覚悟が必要になる。
(だから、誰もやらない)

だが、このままほっておくと、
藤子不二雄の『定年退食』という作品というところまで行き着くかもしれない。
それよりはましだと思うが。
nakamorikzs.net

ただ、選挙期間中にこれを語る正直な人たちはいないだろうな。
ついでにいうと、病院に入院している人たちにも「不在者投票」が行えるように、今はなっている。
もちろんそれは必要なことだ。
だが、本当に本人に意思決定能力があるのかどうか。それをチェックする制度はないのである。
集計もされていない(されているのかな?)
これも、誰かが得をしているのだけれども、これを変えようとすると普通選挙の大原則を侵すことになる。
誰も触りたがらないから、今後もそのままなんだろうな。

*1:ですよね?

*2:医者にあるまじき発言であるが、僕は自分が60歳以上生きられると、あまり思っていない。iDecoに力が入らないのは多分そのためだ

*3:対米盲従は、しょうがない。だって実質属国なんだもの。