以前、「塩の効用」について日記を書いたことがありました。
→http://www.geocities.jp/halfboileddoc/personal/11-09salt.html(塩の功罪)
日本人は諸外国と比べて歴史的に塩分摂取量が多いと言われています。
国民衛生の動向などの統計資料をみると、現在の日本人の塩分摂取量は平均して11g-13g。WHOは高血圧に対しては一日塩分6gを推奨しています。ヨーロッパでの平均摂取量が6g-8gということですから、これは彼らにとってはあながち達成不可能な数字ではありませんが、我々日本人にとっては10gを割り込むことさえ至難の業です。
食生活の方から分析すると、日本の伝統食は、味噌や醤油、漬け物など塩分が高い保存食が多いことなどが原因となっているようです。
高血圧になる原因の一つとして上げられる、過剰な塩分摂取。日本人は、国際的に見ても非常に高い量を摂取しています。一日あたりの摂取量は、ヨーロッパで5~6g、多いと言われるアメリカでも8~10g。これに対して日本は11~13gとなっています。味噌や醤油など伝統的な調味料、漬け物など塩分が高い保存食が、原因の一つとして考えられていますが、最近では加工食品や外食の塩分の高さにも注意が必要です。
http://www.ketsuatsu.com/basic/05.html
でも実はこれはなぜ塩分が多いかという疑問に答えていませんね。
なぜ塩分が高いか?
それは、伝統的な食事に塩分が多く含まれているから。
確かにそうですが、
ではなぜ日本の伝統的な食事には塩分が多く含まれているのでしょうか?
我々の先祖はなぜこのような食事を嗜好したのでしょうか?
日本の気候風土に最適化された帰結として日本の伝統的高塩分食があるのではないかと僕は思っています。
以下、参考にしているのは『肉食の思想』(鯖田豊之)と『風土』(和辻哲郎)です。
気候条件:
- 日本の国土は狭く、山地が多い。
- 亜熱帯気候で、夏季に高温・多雨である。
ゆえに、
- 耕作可能面積が小さい
- 植物の生育に適した土地である。
- 雑草の繁殖力が強い。
- 牧草の成育には適さない(ヨーロッパの"芝生"は雑草のように自生している植物である)
これらから、以下が、導き出されます。
- 牧畜に向いていない
- 労働集約型農業である。
- 耕作面積を増やすことが難しいため、日本では単位面積あたりの収量を増やす戦略をとらざるを得なかった。
- 単位面積あたりの収量を増やすには、労働を農地に極大まで集約させる必要がある。こうして、草取りや肥料など、諸外国からみると「園芸」と揶揄されるレベルにまでコストをかける、日本的な農業パターンができあがった。
この辺までは本の受け売りですね。
さて、こうした条件下においては、日本人の食生活に対し、次のような影響が考えられます。
- 蛋白質の摂取量が極端に低い。
- 塩分喪失の補填。
- 日本の労働集約型農業において、最も労働を必要とするのは、夏季の最も気温・湿度が高い時期である*2。
- 炎天下高湿環境下での肉体労働では、発汗による塩分漏出を起こす。
- 喪失した塩分を補うため塩分の濃い食事を必要とした。
問題は、夏季には必要に迫られ習慣づけられた高塩分嗜好が一年を通じて固定してしまったことでしょう。そして、この高塩分嗜好が伝統的な食事嗜好に刷り込まれてしまったのだと思います。
もちろん四方を海に囲まれた地理的条件から、塩分が入手しやすかったというのもあるでしょう。ヨーロッパの内陸国などでは、遠方より岩塩を購入して使うしかないわけで、必要以上に塩分を摂取することがコスト高でありました。
こうした諸条件により、日本人は最も塩分摂取の多い民族となったと思われます*3。

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ところで、自分は結構塩っからいものが好きなんですが、果たして、塩分を多くとることは本当にいけないことなんでしょうか?