半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

敵なのはコロナそのものではなく変化なのかもしれない

f:id:hanjukudoctor:20200513191709j:plain:w300
2020, 境が浜

コロナウイルス(COVID-19, SARS-CoV-2)。

とりあえず日本に上陸した第一ラウンド。
患者が指数関数的に増え、非常事態宣言がでた第二ラウンドは終わった。
現在は、第二波がくる前の静けさ。90分映画なら前半1/3が終わったところかなと思う。

コロナで今までの仕事のあり方、生活のあり方はボッキリ腰を折られてしまった。
そもそも商売とは、集客し高密度にして(地代を抑えるため)数量で売り上げを確保する。
効率の良さが収益の要である。

だから「三密を避ける」時点で、たとえ営業が再開できても、ビジネスモデルの強みを失う。
昔からのモデルでコロナ時代に強いのは「一日に二組か三組様」の、一年以上予約がとれない隠れ家的なハイエンドな飲食店だけだ。*1

* * *

それにしても、コロナで業務のあり方を見直さざるをえなかったわけだけれども、テレワークだったりテレカンファレンスだったり、企業はそれなりに対応してみせた。
しかし自分が見る限りだが、地方自治体の関連業種は「この人たちと運命共同体で大丈夫だろうか…」と思わせる程度には対応できていなかった。
あ、保健所はさすがに最前線で、よく動いていた。「現場」はどの分野でもよく対応していたと思う。*2問題はICTの導入などの決裁スピードが遅すぎることだ。*3

教育関係でいうと、文部科学省は、中央から自治体の教育関連団体(主に教育委員会)向けに、できるところからでいいからICTの整備をやりましょう、という中央からの指示ではありえないくらいアツいメッセージを送った。

2020年5月11日 学校の情報環境整備に関する説明会【LIVE配信】
これは、各地域の教育委員会、学校が「できない理由」を上げて動かないという状況が十分予想されるために、先回りしてとにかく対策を取るよう、強い調子で促している。
だが、やはり地域の公立学校の動きは鈍いようだ。残念だけど。

自学自習せず20世紀のテクノロジーに取り残されている自分たちを再教育することさえできない人たちが他人を教える資格なんてないだろ、とさえ思う。
あとは家庭の格差ね。ネットはおろか、スマホや携帯すらない家庭でICTベースの教育は確かに無理なのかもしれない。
結構そういう家が多いと聞いたから。

* * *

結局のところ、コロナで試されたのはルーチンワーク以外の事態に、業務変更できる柔軟性なんだと思う。
業務の堅牢性は通常ならミスをなくし効率を追求する点では大事だ。
だが、こういう変事では、柔軟性にこそ真価が問われるのだろう。

通常の業務ではそういう才能はあまり称揚されない。地震津波のような大災害では、もうちょっと泥臭い「火事場のくそ力」みたいな能力が必要になってくる。
今回のように、社会インフラが保たれた中で行動変容を要求されるという、ある種、熱くてクールなシチュエーションは滅多にお目にかかることができない。

* * *

ところで、今回のコロナのような全国一斉自宅蟄居生活が、今後あるかどうかわからないが、一人の人間の個人史としては、似たようなことはよくある。
例えば大きな病気や怪我をして入院したり自宅療養したりする時だ。

研修医の頃の受け持った患者さんの思い出である。
確か潰瘍性大腸炎の患者さんだったと思うが、入院生活が非常に苦痛で、うつ状態になっていた方がいた。
訊いてみれば、趣味はゴルフやテニスで、外で遊ぶ趣味ばっかり。
家では寝るだけ。本を読んだりテレビを見たりするような趣味は一切ない方だった。
こういう人が、入院安静を強いられていると、今までの生活パターンが全くできない。
そりゃ定めし苦痛だっただろうなと思う。

でもこれは皆に言えることで、今回のコロナの自粛で、家でやることがないと、かなりしんどい思いをしている人。
アフターファイブは飲みに行ったり風俗に行ったりするのが息抜き、みたいな人。
そういう人は人生の後半で、骨折や癌などで入院生活を余儀なくされた場合に、おそらく同様のしんどさがある。

インドアでそれなりに楽しめる趣味、趣味と言えるほどでなくてもいいけど、時間つぶしができるようにしておいた方がいいですよ、本当に。
今回のはいい予行演習になったと思う。

*1:ところで、既存の遊興施設で同じビジネススタイルをとらないのはなぜだろうか?例えば、ディスニーランドにしてもUSJなどにしても、プロ野球観戦にしても、仮に今の15倍の入場料をとり、1/15の客しか入れない、ということをしてはダメなのだろうか?もちろん飲食やノベルティグッズの売り上げなどは人数が減った分減るだろうが、見かけ上の入場料収入は確保できる。でも1万円を超えるチケットは原則ないのはなぜだろう?今年度だけでもいいからやるべきだと僕は思う。例えばご当地広島カープだったら、年間5-6回試合見に行くのを一回にしぼるって見に行くだろう。5万のチケットでもファンは行くと思う。だって周りに自慢できるもん。

*2:あと所属医師会は僕より若手の理事が奮闘してオンライン発熱外来を開設、医師会でドライブスルーPCR検査所を開設したり、かなり対応が早かった。

*3:介護保険の審査会についても2月ごろから一部委員から感染流行時に集まるのはどうかという意見が出ていたが、反応は鈍く……で、4月末に決まったのが、Faxを使ってやりとりをします、という時代遅れの代物。千鳥のノブではないが「なぁ?バカなんか?」と言いたくなった。iPadを委員の人数分買うのには議会を通さないと…とか言い訳をいただいたが、いやそれパイロットで試してないのにいきなりiPad人数分購入するわけ?端末持っている委員はタブレット貸与いらないでしょうし、普通はまず小規模でやってからでしょうね。まあ本質論を言えば、審査会そのものが不要、というところに落ち着くんじゃないか、とさえ思いますけど。