半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

はっきり言って社会的常識がかなり欠落している人が多い

 とか、首相が言ったとか、言わないとか。

 言葉には人にとても深く沁み入るものと、そうでないものがありますが、今回の言葉は僕にはあんまり沁み入りませんでした。

 いい意味でね。

 あんまり傷つかなかったよ!

今回の発言は、個人としての医師に向けられたものではなく、あくまでも圧力団体としての医師会に向けられたものなの?

 医者の確保は、自分で病院を経営しているから言うわけではないが、大変だ、はっきり言って。社会的常識がかなり欠落している人が多い。うちで何百人扱っていますからよく分かる(首相談話より)。

 いや、これは明らかに勤務医のことを言っていますよね。麻生飯塚病院の人はもっと怒ればいいのに。

 あー、「私は個々の医師が非常識だといっているのではありません。特定郵便局長会なきあと、今や最大の圧力団体となった医師会が非常識だといっているのです。」といっているのは池田信夫先生でした。違う人の意見は、違うものとして考えなければ。

 しかし私には件のエントリー(http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f65bacae249f66488dc8bfc3e9fbe384)をみても、そういう風には明確に読み取ることはできませんでした。

 あのエントリーは池田先生の個人的な体験に基づく印象論にすぎないわけで、それを一般的な結論として演繹づける読者の側に問題があるのでしょうかね。池田先生がリテラシーを読者に問うてるわけや。コメントをみると。

 とはいえ、「医師会=医師という職能集団を代表する団体」であるという常識は、未だに非医療関係者の中で根強い。二つを明確に分離して考えられる人は、業界内部の人でない限り少数派です。だから医師会が非常識だとアナウンスすることでさえも、医師が非常識であると受け取られてもおかしくはないでしょう。それに「今や最大の圧力団体となった医師会が」と書かれたことから汲み取る限り、池田先生本人も、一般に膾炙している「医師会=医者の代表」という昭和の価値観から脱却できていないように思います(エピソードも昭和のものだし)。現在の医師会の政治力を知っている人ならそんなことはとても書けないはず。

 ところで、一応僕は勤務医なわけです。ということは、麻生首相が僕、そして僕らの同僚を「社会的常識がかなり欠落している人が多い」と言ったことになります。実際のところ、どうなんだろう?

 ちなみに僕の答えは

「社会的常識ですか? あると思っているんですけどねえ……、

 え?ない? あー すみません。以後気をつけます……」

 みたいなものです。

I hope so...

「おまえ、社会的常識がかなり欠落してるみたいやで!?」

と面と向かって言われた時に、つかみかからんばかりに怒る人というのは、もともとに社会的常識に欠けた人であるか、あまりに余裕を失っているがゆえに、そもそも持っているはずの社会的常識を働かせることが出来ない人のどちらかでしょう。

 医療ネット界(どうなんだ、これ)の反応は、畢竟そういうことです。

「おまえ、社会的常識がかなり欠落してるで」と言われた時に、

「いや、僕、あるよ。社会的常識。」という答えることさえ、社会的常識の欠如を間接的に証明してしまうように思います。

 我々はその問いに対してどう答えるか、ということではなくて、その問いに答えた我々の反応をどう受け取られるか、ということをよく考えないといけない。おそらくそれを考えるということが、社会的常識「力」というものなのだと思います。

 しかし。

 正直なところ、医者は慈愛に満ちて社会的常識に富んだ人格者だと思われているよりは、社会的常識に欠けた金髪豚野郎だと思われていた方が仕事しやすいような気もするのですよ。