半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

異次元の少子化対策とは

2023, 高梁

コロナ(Covid-19, SARS-CoV-2)……
一旦は視界から消えた。
もちろん発熱外来は稼働しているし、時々は陽性者でているが、マスとしては無視できるレベルになっている。
第八波は、中小病院にとっては案外きつかった。

少子化

減少しつつあった出生率が、6−7年分進行が早まったというニュースがあった。
www.nikkei.com

大災害でStay homeという状況であったけれども、残念ながら北米大停電のようにベビーブームが起こったわけではないらしい。*1
それも無理はない。コロナ初年度を思い起こしてもらうといいが、コロナ罹患が忌み嫌われ、安心して妊娠・出産できる状況とは程遠かった。
産科が引き受けてくれる見込みもない。
里帰り出産もできない…(東京から地方に来ることがNGだった時代もあったじゃないか)
ましてはコロナに罹患したら母体そして胎児にどのような影響があるか?というのも「わからない」の一点張りだった。
妊娠をするのにはかなり勇気が必要だった。*2

ま、それはともかく、国も少子化対策に、あらためて動き出した。
岸田内閣いうところの「異次元の少子化対策」だそうな。
異次元?と異次元とはなんだろうか。

「新しい資本主義」とか高邁な看板をぶち上げておいて、結果的にはなんにも中身がなかった既往を考えると、
異次元の少子化対策は、おそらく無次元の対策になるのではないかとは思う。

ただ、政府にも同情すべきところはある。
少子化対策するのは、おそらく異次元級に難しいだろうから。

企業ごとに「再生産性」の開示を義務付けるのはどうか

ま、現実的に、少子化対策って難しい。
地方自治体や個人に対する政策なんて、もう出尽くしているのである。

企業にプライマリーアウトカムを設けるのはどうか。
もちろん今でも企業に対する少子化対策はある。育休制度とか、育ボスとか、企業内認可保育園とか。
しかし、そもそも企業は少子化に対して、直接のアウトカムを義務付けられているわけではない。
アウトカムがないということは、企業そのものは少子化に責任を負わない仕組みになっている。




しかし、妊婦の生活基盤を提供するの舞台は結局のところ多くは企業だ。
動物だって、子育てをするときには巣作りをしたり、安全な場所を選ぶ。
人間もそうで、全くのフリーランスであるよりは、正社員や専業主婦など生活基盤がしっかりしている方が子作りはしやすい。逆にいうと、子作りに際して、ある程度生活の安定性を選好する傾向にはある。

 妊娠・子育て世代の女性は、自分の所属する会社=コミュニティが子育てに向いているかどうかを冷静に見極め、人によっては、それを直接の理由で転職することも多い。(大企業よりも中小企業の方が、転職せず留まり続けるインセンティブは低い)

当グループはいろいろ理由があって、職員待遇のホワイト化をここ5-6年でかなり強化した。
今当グループの有給休暇取得率は75%前後とかなり高いし、産休・育休をとる職員も多い。
男性育休の取得奨励もしていたり、企業内保育園を作ったり、子育てしやすい環境に尽力している。

もちろん、子育てしやすい環境は、他の職員にとっても有給休暇をとりやすかったり、全体に大きなメリットはある。
ホワイト企業化するには、産休・育休は大きな指標になる。
ただ、そのためには当然増員が必要で、そうすると企業の「生産性」は落ちることになる。

でも、頑張ってそういうホワイト化を推し進めても、「あそこはママに優しい」とかの噂止まりであって、相対評価がわからないわけだ。
企業の「再生産性」みたいなものは、数値化されないわけで、だからこそ、企業としては、見て見ぬ振りができる。

この際だから、すべての企業は、離職率や再生産率、有給休暇取得率など「働き方」に関する指標を公開することを義務付けたらどうか。
伊藤忠商事が「企業内出生率」というのを公開したが、これをすべての企業で義務付けてしまうわけである。
www.nikkei.com

ちなみに再生産という言葉は一般的ではないんでしょうかね。
生産=Product、に対して子育て・出産は「再生産」=Reproductという英語がある。ただ再生産という訳語はあまり一般的ではない気がする。なんか「リサイクル」みたいなイメージにとられ、クソリプがついたりする。

できれば経営者視点では、こういった指標に合わせて、税率とか補助金とか呉れたらいいなと思う。
けど、それがなくてもいいから、他の企業に比べ、自企業がどれくらい頑張っているかが見たいのだ。
ということを成績表を見せてくれたらいいなあと思う。
成績がわからないと、やる気でないんだよな。

もしかしたら、所詮中小企業。弊社の努力など世の企業一般に比べ相対的にはしょぼいかもしれない。
でももし数値が開示されているなら、そして平均以上に頑張ろうと思う。

なので、そういう指標の開示を義務付けてくれないかなあ。

*1:もっとも、これも都市伝説に過ぎず、正確にはベビーブームとは関連がないという説もある

*2:私の会社では、コロナ二年目に若い女性職員の結婚ラッシュがあった。みんなよく結婚したと思うけど、確かにパートナーが強く必要とされたのも理解できる