半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

わたしのコロナワクチン体験記

コロナ・コロナ・コロナ(SARS-CoV-2, Covid-19)……

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2021, 広島

5月にファイザー社の新型コロナワクチン(コミナティ)を受けた。今日はその時の体験記。
※感想は個人のものであることにご注意ください。

医療従事者枠での接種

コロナの感染症拠点病院はない中小病院で医師をやっている。なので、医療従事者枠の第二集団。
ワクチンは医療従事者枠で比較的早くから話が来ていた。
しかし3月末くらいから具体的な人数やワクチン数の話がまとまり、実際に第一回目の接種はGW直前の4月半ばだった。
私のいる法人では6−7割がワクチンを希望したと思う。
私はもちろん希望し、接種可能日の最初、第一号になった。

第一回

問診票に記入し、筋注を受ける。
あんまり痛くない。こんなもん?と思いつつ、15分の待機が終わり、
カロナールをもらって、午後の外来に戻った。

ところが、別に熱はでないものの、なんか、だるい。
重だるい。
昼食にたらふく脂っこいものを詰め込んだ時のように、やたら眠気が襲ってくる。
注射した腕はややじわっとする。

どうにも仕事にならない。外来の診察椅子で脱力してほぼ寝たようになっていた。
幸いだったのは午後の外来は、ここ1−2ヶ月の中でも最も予約が少なかったことだ。
外来時間のほぼ7割近くを寝てすごし、なんとかこなして、家に帰った。*1

「意外にしんどいな……副反応は若い女性に多いんちゃうんかい。
 若くない男性の僕はそんなに症状でないはず……しかも一回目だぞ」
と思いつつ、早々に横になった。
翌日。食欲も少し落ちている。
やっぱり体はだるい感じはする。しかし測っても熱はない。
二日目以降はほぼいつもと同じ感じだった。
しかし腕の痛みも4−5日経ったらまったくなくなった。

第2回

2回目はGWあけ。
しかしこの日は午後の外来は枠はすでに満杯で、めちゃくちゃ忙しいのである(GWあけだからね)
どうするよ…と戦々恐々。
ところが、二回目の方が、全然ラクだった。
 外来も頑張ってこなし夜もよく眠れた。翌日も刺されたとこが少し痛む程度。腕は上がる。

なぜだろう?
しかし少しヒントがあるように思った。
その日は曇っていて、朝から体調が悪かったのだ。

歳をとると体調が悪くなる

数年前に骨折をしてから、冬の寒い日や雨の日、湿気の多い日は、首や腰、骨折をした場所が痛むようになっている。
(骨折の話は以前に書いたことがある。もう10年になるんだねえ。)
hanjukudoctor.hatenablog.com


寒い日や雨の日には関節痛が悪化することはヒポクラテスの時代から言及がある。
しかし実際に、明確な作用機序は解明されていない。
だから教科書にも曖昧な記述しかない。*2

この現象、若い人はあまり知らないけど、歳をとってくると多くの人が身を持って知っている。

20代の頃は、未来への不安や人間関係の軋轢、金がない、などのさまざまな問題はあれど自分の肉体だけは健康だった。
それが、30代を過ぎ40代になってくると、いろんな不調が増えてくる。

常に体は疲れているし、体のどこかはいつも痛かったりする。
皮膚もたるみ、変にシミも増え、指とか耳とか予想もしないところに変な毛が生える。
逆ん必要ある毛(頭髪とか)は薄くなったりもする。
尿もれしたりオナラがでやすかったり、体を密閉していたパッキンのようなものも劣化してゆるんでくる。
今でさえこうなんだから60代以降の自分はどんなになっているんだろうか……
暗澹たる気持ちになってくる。

要するに、年をとると、いつも体のどっかが調子が悪くて痛みを抱えて生きているということだ。

ワクチン

二日目の天気は湿度がひどく、僕は朝から頭が痛かった。
そんななかワクチンを打った。
ワクチンは多分それなりに症状をもたらしたのだと思う。

が、私も朝からの天候による不調があったもんだから、カロナールを使い、レッドブルなどのエナジードリンクも入れてやりすごした。そんな中では、ワクチンのしんどさは雲散霧消してしまったのだと思う。

ワクチンの副反応が若者に強くでるのは、要するに若者には痛みや不調が普段ないからじゃない?
と思う。
真っ白なシーツが汚れると目立つけど、薄汚れた雑巾が汚れても気にならない。

年代による副反応の頻度のグラフなどを見ていると、そう思えてくる。

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年代別副反応の頻度(これは倦怠感のみだが、他の症状も概ね同様)


もちろん、若い人の方が抗体産生反応が強いから、とかそういう真っ当な機序も作用していると思う。*3でも、若い人の抗体価が高いのは事実だが、高齢の方はワクチンをうっても有効な抗体獲得が得られないわけではない。だから抗体産生力の差だけでは年代による副作用の差は説明しにくいように思う。

そもそも体の異常事態に対する感受性が若い人と年寄で違うのがこの数字の正体ではないか。
年寄りの体は終戦末期の日本みたいに、空襲警報がなっても誰も驚かなくなっちゃっているんだよ、きっと。

* * *

なので、外来でご高齢の患者さん、特に普段「せんせ〜腰が痛い〜頭が痛い〜」といってくるような御仁は
「先生、私はワクチンうってもだいじょうぶなんでしょうか?」なんて訊いてくるわけです。
そういう場合は、にっこり笑顔で
「だ〜いじょうぶ(笑)(いつも痛がっているあなたはきっと副作用大して出ませんよ)」
と言うことにしている。

*1:その日には某バンドのトロンボーンセクション練習があったが、かなり注意力散漫で散々だった

*2:いくつかの観察研究はある

*3:同じ若者でも女性の方が副作用が強いのは、抗体産生能が女性の方が強いせいだろう。痛み閾値は女性の方が強いから