村上春樹氏が、『村上さんのところhttp://www.welluneednt.com/』でメール問答をしている昨今ですが、そういえば、『色彩~多崎つくる』もその後のも読んでいなかったことを少し反省した。
私は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が好きなのだが、登場人物の一人である博士が、音をまるで手品のように出したり抜いたりするシーンがあった。博士が音を抜いてしまうと、全くの無音になってしまい、孫娘はしゃべっても声がでなくなってしまう。
もちろん現実はそんなに簡単にはいかない。が、最近この分野も結構すすんでいるらしい。
不勉強だった。
最近は旅行が多いから、ノイズキャンセリングのヘッドホンは手放せない。あまり飛行機には乗らないけど、乗るときには重宝するし、新幹線に乗る時も「ゴーッ」というノイズが、ずいぶん軽減される。
ノイズキャンセリングは、簡単に言えば、音の波に逆位相(つまり反転された)波をぶつけると、波は消えるということを応用した装置である。考えた人えらいなあ。
これを一歩すすめてヘッドホンという形じゃなく、オープンエアな空間に発生するノイズを消せないかと考えると、これはなかなか難しいらしい。
音波を拾って、それを計算して、逆の波を作る、という作業をコンピューターで処理しているわけだが、当然、音を拾って計算して逆位相の音がだすまでには時間的な遅延(レイテンシー)が生ずる。
新幹線や飛行機のような、ある種通奏低音のようなノイズは、大きな変化がない波の集合体なので、多少のレイテンシーは問題ない。ただ、静かな空間に音が発生した時に、それを打ち消すような逆位相の波を瞬時に作り出すのは、技術的に難しそうに思われる。ずれてしまったら、当然静寂効果はなくなるからだ。
ただ、最近はスピーチ・プライバシーシステムというのが結構発達しているらしい。
ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンみたいに、ノイズを軽減することはできないが、たとえば会議室での話し声や、外来の診察室での内容が隣の待合室に漏れるのを防ぐために、その話し声と同じような帯域のマスキング音を足すことによって、かなり自然に話の内容をブロックできる。
クリアファイルで、中にいれた書類の内容が見えにくくなるようなものがあるが、そういうのに近い。
http://www.biccamera.co.jp/shopguide/office/speech_privacy2.html
(これはYAMAHAの開発技術のようだが、数社がしのぎをけずっているようだ)
なるほどなあ。
ではうちの診察室に要るか?と考えると、間仕切りのドアもしっかりして、そうそう音は漏れない。
だからさしあたりの必要性も感じてないんだけれど、こういうデバイスがあれば、うまい使い方を思いつくのかもしれない。
ちょっとずつ文明は進歩するんだなあと思った。