このBlogに書くのも久しぶりですね。
実は10月に引越しました。一戸建てを新築しました。
完成までには、いろいろないきさつがあったり、ひとかたではいきませんでした。個人的には様々なイベントを乗り越え結構たいへんだったなあ…と思うわけですけれども、まあ平凡といえば平凡な話ですから、割愛します。そういうことにしておいて?
例えば、それほどぱっとしない人の結婚式に呼ばれて行くとします。披露宴の中程で、生まれてから現在=結婚までの生い立ちを総括して語るコーナー、のようなものがたいていありますよね。僕はああいうエピソードの「誇張」というか「盛り方」が好きでしょうがないのです(そういえば、アマチュアジャズ・ミュージシャンがプロフィールに書く「盛り方」にもおんなじような匂いを感じる時もあります)が、客観的にはぱっとしない平凡な人生にみえて、苦労した話とか頑張った話とか、人生の山や谷がそれなりにあるもので、そういうものを垣間見させてくれるのは、退屈しないものですが、でもまあやっぱり……冷静に考えれば……退屈な話だよね。
それと同じような感じかなあ、建てる時の設計や施工業者との折衝の話なんて、ね?
家を建てると、とにかくすんげー買い物をするわけですから、「こりゃしばらく倹約生活だな」とか思うわけです。けれども、引っ越してから快適に過ごすためには、家具をいろいろ買い換えたり補充しなきゃいけなかったりします。ここでさらに金を吐き出すのは、精神的には結構きついですね。当直の後緊急で呼び出しをくったような気分です。
というわけで、いろいろ家具を買う必要がありました*1。さしあたりはリビングに置く、ソファーをさがす必要があったんですよ。
村上春樹が「ハードボイルド・ワンダーランド」で書いていましたが、ソファの選択には一つの見識が確かに求められます。ゆえにソファ選びっていうのは、その人のセンスを問われる、ある意味重大な選択です。
ちなみに、これは前の家で使っていたソファーなんです(写真は前の前の家)。新婚時代に中目黒に行って選んだものでした。これも悪くはない品ですが、布張りで、しかも取り外しができない。
子供の居る環境で数年経っちゃうと、もう布地が結構汚くて、そして埃を吸っちゃっているので、ちょっとあかんなあ、と思うわけです*2。あと、シャープなラインもとても気に入っていたんですけれども、「角」は、小さい子供のいる家では要注意。乳児・幼児っていうのはこちらが思っている以上に間抜けなやつらなので、不注意でさっくさく当たるんですよ。怪我の元になる。うちも子供が1歳~2歳の時にはヒヤヒヤしました。
結局、『赤ちゃん本舗』とかに売っている、角を守るフカフカしたやつをつけたりして対処したわけですけれども、そういうのをつけると、おしゃれなデザインもクソもなくなってしまう。
ゆえに、子供を作る前の新婚家庭の人達は、ソファーを買う時には、カバーの丸洗いができること、角があたっても怪我しないか、この二項目は前もって考えた方がいいですよお、と過去の自分には言いたいですね。
とりあえず、どんなソファを買うのか。買うべきか。
ゼニにものいわせてカッシーナ…というのは、自分らしくないと思うわけです。
ま、ちなみに、最近家を整理してでてきた 光浦靖子「傷なめクラブ」には興味深い言及がありました。
村上春樹が一言で済ませていた「見識」というのは、実はそういうことだったのでしょうか…
(以下、引用)
確かにオネエ言葉には妙な説得力があります。
こあいだソファーを買いに、オカマたちに付き合ってもらった時のことです。
一人のオカマが「あなたソファーに対し、譲れないものを順にいいなさいよ」と聞くので、私が「サイズ・形・値段・色かな?」と答えると、オカマたちがブチギレたのでした。
「ソファーにとって一番大切なのは、尺度でしょ!」と。
シャクド?聞いたことない単語でした。
「ソファーなんて男とイチャつくためにあるのよ。男のアソコをお尺するでしょうが。お尺がしやすいソファーを”尺度が高いソファー”、こう言うのよ!」と怒られました。
でも私には彼氏はいませんし、尺予定もありません。そう言うと「アンタみたいなブスはお尺してなんぼでしょうが!!』とまた怒られました。
でも、オネエ言葉でこう言われるとなぜか納得してしまうのでした。ああ、私は尺度の低いソファーを求めているから彼氏ができないんだ、だから私はダメなんだ、そんな気になるのでした。全くとてつもなく下品で失礼で訳の分からない発言です。
結局、オカマのすすめる尺度の高いソファーを買ってしまいました。ただ、そのソファー、配達されてから発覚したのですが、うちのドアを通れませんでした。
(光浦靖子『傷なめクラブ』より)
個人的な感想を言えば、私に関して言うと、おじさん(既婚・子持ち)なので、尺度は考えなくていいのでよかったです。
結局選んだソファはMaster Walというメーカーが岡山の浅口郡にあるのですが(http://www.masterwal.jp/home.html)、そこのにしました。Moreless Sofaというやつです。
ついでに ローテーブルと、ソファでなんかするのに便利なサイドテーブル(枕頭台と同じ仕組み)と買いました。
テレビとかを置くローボードは、家の設計士が家の付属品として設計したもので、それと、結果的にはとてもマッチしています。
購入を決めたのは シャクド、ではなく、いろいろな要素があります。
その1:基本的なテイストの連続性:結婚してから、二度ほど引越ししていますが、うちの家具は大体ウォールナットっぽい感じのテイストで統一していました。ダイニングテーブル・食器棚などなど、新たに購入する際には、濃い目の木の家具を買うようにしていました。
従って、ウォールナットを基調とした家具との親和性が非常によろしい。
その2:地元企業であること。
ソファの購入に際しては、もちろんイタリア製ソファ・北欧のメーカーなど、海外ブランドも当然検討しました。もちろん良さはあると思います。
ただ、これだけ構造不況が続いている現状、いいものであれば国産品を優先したいという意思も若干はたらきました。
モノづくりニッポン万歳。
しかも、岡山の近郊の企業ですから、地場振興という意味でも意味は大きいとおもいます。
今まで買っていた家具、例えばダイニングテーブルとかは 東京にある“ウッドユウライクカンパニー”というところで購入したのですが、家具のテイストとかはこのMaster Walに酷似しています。モダンな、木の面を生かした天然木の造り。おそらく東のウッドユウライク、西のマスターウォール、という感じなんじゃないかと思います。今回知人に教えられるまで、マスターウォールの存在を知りませんでした。知ってればテーブルとかもここで買っていたかもしれない。
え?府中家具? うーん、そこは後述のデザイン力ですかね。
その3:デザインがシンプルであったこと。
村上春樹の書いたようにソファの選択には見識が求められます。問題は何を重視するかです。
人間工学的なすわり心地の良さとか、そういう観点では、やはりそういうのに長けた企業があるでしょうし、北欧やイタリアのソファの付加価値というのはそこにあるのだと思います。
このソファは、見た目としては、人間に寄り添った感じはあまり受けません。見方によっては殺伐とした感じさえ受けます。のっぺりして、線が少ないのが特徴です。くちさがなく言えば、昔の駅のベンチみたいでもあります。
構造としても、平らなウォールナットの台と背もたれに、それぞれ長い革の座面をのっけているだけ。ウォールナットありき、のデザインだと思います。
だが、それが、私の琴線に触れるのでした。
洋室用でありながら、和の要素さえ感じられるすっきりしたミニマルなデザイン。
現代の日本間の原型になっている、慈照寺(銀閣寺)の書院造、あのコンセプトを現代に延長して、ソファというものを作ったら、このようなデザインになるんではないでしょうか。余分な線の無さ、モダンが非常にクールであり、非常に好ましく思われました。
そして座ってみると、そんなに座りにくくもなかったのです。
バウハウス転じてアノニマスデザイン派の私としては、これはこれでありかなあと思いました。
クッション部分だけ取り外すことも簡単なのもポイントが高いです。