半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

インフルエンザ

2月も前半だというのに、ひどくなまあたたかい。変な気候です。

今日なんか、夜になっても15℃くらいあった。信じられないですね。

今日は雨も降っていて、じんわりと身体があたたかい霧をまとっているようでした。

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 今年は暖冬という触れ込みのとおりで、12月に入っても暖かい気候が続いていた。

 冬季は調子を崩す高齢者の方が多く、病棟はそういった方で充満する。感冒・肺炎・気管支炎などもあるし、脳梗塞心筋梗塞などの血管イベントも多い(循環器内科にとっては冬は繁忙期であるし、内科も基本的に冬忙しい。)。

 ただ今年は暖冬のせいか、12月に入っても例年のような患者の動きがなく、病棟も不気味なほどに静かな状態が続いた。12月に入っても病棟が空いているなんて…

 医師としてはこういう暇なの大歓迎なんですけれども、経営者としてはちょっと頭がいたいよなあ…と思っていました。近くの開業医の先生と食事している時にも「今年風邪の人全然来ないよねー。正月の餅も買えないかもねー(笑)」とか言ってたんですよ。

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 ところが、1月半ばに皆さん御存知の通りひどい寒波がおとずれました。

 そうすると、慢性疾患のある高齢者の方(透析とか肝不全とか)が調子を崩したり、例年のごとくに感冒・肺炎の高齢者が続々と運び込まれて、あっという間に病棟は一杯になってしまいました。気候がいかに人の身体に影響を及ぼすかということを改めてみせつけれられましたね。

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 ただ、インフルエンザはその時期にも流行ってなくて、そのあとになってインフルエンザの流行がやってきました。

 私のいる街(広島県)では1月末くらいから2月にかけてじわじわっとインフルエンザが増えてきました。例年よりもちょっと遅い流行ですし、すでに寒波は過ぎ去っていますから妙になまあたたかい中、インフルエンザとパラインフルエンザ的な感冒が微妙に流行ってます。今ちょっとだけ忙しいですね。

 例年だと、12月末から1月にかけて超忙しくてだんだん病棟に余裕ができてくる…だいたいピークは一峰性なんですけれども、今年は12月ひま→1月どーんと忙しいけどすぐひまになり今またちょっとだけ忙しい、みたいに、なんというか、ダラダラしています。

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 インフルエンザについては、ここ十数年は全世界的な社会実験を繰り返しているようなものだと思っています。

 治療に関しては人間側の防御手段(ワクチンもそうだけど、タミフルとかの治療介入手段も増えたわけで)に対する、インフルエンザ側の変化、それが毎年繰り返された挙句、もうなんかよくわからないところに来ています。その間に色々なトンデモがありましたね、タミフル脳症説とか。

 あと、LCCの普及とかそういうのもあって、世界的に人口流動性が高まっているのも、おそらく感染形態に大きな影響を及ぼしているんじゃないかと思うんです。以前はインフルエンザの流行っていうのは、世界的にみると桜前線みたいに順次波及してゆくさまがみてとれたわけですが、それって、閉鎖された系に外部から持ち込まれたインフルエンザがその系の中で急速に流行して…というモデルでして、各地域でそれがドミノ式で生じているのが、割とはっきりしてました。これって、人口流動性がある閾値を超えると、動態が全くかわってくるはず。

 20世紀のインフルエンザは、お風呂をかき混ぜないで沸かしていたようなもので、21世紀のインフルエンザはお風呂をかき混ぜながら沸かしているようなもんだと思います。