
ビジネス書や経営の本を読んでいると、よく目にする言葉があります。「手段と目的の取り違え」。
多くの経営者は、利益を目的と考えている。しかし、利益は事業の目的ではなく、事業活動の妥当性を測る尺度である。(ドラッカー『マネジメント』)
とか古典的な経営の本にも書いてある。松下幸之助も同じようなことを言ってる。
最近のビジネス本にもよく書かれている。
経営の問題のほとんどは突き詰めると手段の目的化に起因しているというのが僕の考えです。企業組織は目的と手段の連鎖でできています。上司の手段が部下の目的になる。そもそも組織には「手段を目的化するシステム」という面があります。放っておけば必ず手段の目的化に陥ります。(楠木建の頭の中 戦略と経営について)
なるほど、そうだよなーって思います。
私も仕事してて「なんでこれやってるんだっけ?」って立ち止まって考えることがある。形だけ残った業務プロセスとか、本来の目的を見失った会議とか。
そういう会社の課題を洗い出した時の解決法として、「手段が目的になってないか」という観点でスクリーニングすると、2,3割の問題は片付くように思う。*1
ビジネスの世界では、この思考回路はなかなかうまく機能するツールだと思うんだけど、もっと視野を広げて(もしくは狭めて)、人生っていう文脈で「手段と目的」を考えてみたら、どうなるんだろう?って。
「会社」ではなくて「俺」の手段と目的ってそもそもなんだ?
人生の目的
古典的な哲学からいうと、古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、人生の目的は「幸福(エウダイモニア)」にあると考えている。
ただの快楽や富じゃなくて、徳のある生き方を通じて達成される最高の善だって。
ま、これはなんとなくうなずけるような気もする。
でも実存主義の哲学者サルトルは違う考えで、人生には最初から決められた目的なんてないって。「人間は自由の刑に処せられている」っていう有名な言葉が示す通り、私たちは自分で目的を見つけて、選んでいかなきゃいけないんだって。
うんうん、これもなんとなくわかるよね。
あれ、でもこの二つは真逆のこと言うてる。
もし、サルトルの言うように人生に決められた目的がないとしたら「手段と目的の取り違え」っていう考え方は、いったいどういう意味を持つんでしょうね。
そもそも人生に目的はあるのか?
つまり人生に意味はあるのか?
それなら、死に意味はあるのか?
どの時代においても、人類は、恐怖、病気、苦悩、死に直面してきた。そして、文明を定義するのはいつも死との関係に他ならない。
死に意味を付与することに成功すると、その文明は繁栄する。逆に死に意味を見出すことができないと、その文明は消滅する。(ジャック・アタリーパンデミック後、あたらしい世界が始まる)
死に意味を付与する。
ほとんどの文明では死後の世界、というものが(真偽の実証をさしおいて)省察されており、我々が死という現象の無意味性に耐えられないことを暗に示している。
そして死に意味を付与することは、生、すなわち人生にも意味を付与することともつながるはずだ。
死がないと仮定したら?
ここでちょっと想像しよう。
もし私たちが不死の存在だったとしたら?
無限の時間があるなら、全部のことを順番にすればいいわけで優先順位をつける必要はなくなる。
「手段と目的」っていうのは、有限の指し手の中で物事に優先順位をつけて行動するからこそそういう思考回路になるわけで、もし指し手が無限だったら、そこではあんまり意味がなくなるかもしれない。
つまり「手段と目的の取り違え」っていう問題は、「人間あるある」、つまり定命の存在である私たち人間ならではの課題なのかも。
決められた時間の中で、何を優先するのか。
何を大切にして生きるのか。
その選択を迫られているからこそ、手段と目的を取り違えることが問題になるのかもしれない。
たとえば「葬送のフリーレン」ではそのあたりに少し踏み込んでいるように思われた。不老のフリーレンと老いてゆくかつての仲間。
その考え方の懸隔などが丁寧に描かれている。
いま生成AIの成長が目覚ましいが、彼らもまた不死の存在なわけである。
シンギュラリティを超えてAIが人間から独立した知性を持ち得たら、それは不死の叡智ということになる。
そういうAIは「人間って不思議な思考をしますよね」と人間の思考を非合理なものに思うのかもしれない。
AIの生理学的条件で思索を重ねると全く別の思考になってしまうのではないだろうか、とも思った。
自分のこと
私、今年50になりました。
時々半世紀もの自分の人生を振り返ることもある。
誇るべき目的や意味が僕の人生にはあるのか。
正直よくわからない。
わかりたくないだけかもしれない。
うっすら無意識下に追いやっている。
幸福や不幸は心の絶対値ではなく微分的な差異にある。だから毎日淡々と生き、大きな浮き沈みもない今は、すごい幸せでも不幸でもなさそうだ。
しかし外部条件の大きな変化に耐えうる堅牢さがある、と言うことは、たぶん幸せといってもいいのだろうな。


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