半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

風邪の不思議

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近所の溝。2020年

コロナ・コロナ…(Covid-19, SARS-CoV-2)
もはや、なにがどうなっているのか、よくわからん。
僕らは状況を俯瞰できる参謀本部にいるわけじゃない。末端の医療機関は与えられたドクトリンにしたがって診療をしてゆくだけだ。
九月から10月にかけて、指定感染症の変更や、指定医療機関と保健所、地域の医療機関の関係性にも変化があった。PCRするかどうかの判断にも、保健所は一線をひこうとしている。戦局は冬にかけてまた違った様相を迎えるのかもしれない。

ただ、私はなんとなく最悪の事態の4割くらいに終わるような気がする。
もちろん、例えば自院の従業員に感染者がでたり、院内でクラスター感染がでる、なんて局地的な最悪な事態が起こる可能性は注意深く除外していかないといけない。
だが、マクロで見れば、コロナそのものよりもポストコロナ体制に必要な先行投資(人的・金銭的な)に注目する時期にきているのではないかと思う。

ところで風邪がはやりはじめた

十月に入り、ずいぶん寒くなってきた。
地域でコロナもインフルエンザもまだまだ流行しているという兆しはないようだ。
(コロナのPCRは数はそれほど多くはないが、コンスタントに件数はあるが、陽性率は低い)
ところが、十月に入ってから、細菌性でもない、上気道感染によると思われる患者がポツポツと見受けられる。
熱も 37.5℃だったり、38.5℃以上の高熱であったり、中には一般なウイルス感染ではそこまでお目にかからない 40℃以上の熱も、けっこういる。

いろいろ調べても「まあ、普通の風邪だよな…」と思われるような状態で、実際熱もインフルエンザほど長続きもせず、結構すぐ戻る。
(調べられる場合はコロナのPCRも調べているけど、やっぱり陽性はなかなかでない)

ただこれ、不思議に思いませんか?
新型コロナウイルスは、感染力とか伝播力でいうと、普通の風邪と変わらない、はずだ。
そして、コロナ流行して以来、ソーシャルディスタンスとか、三密を避ける行動様式を、みなある程度身につけている。

なのに、なんで、コロナは罹らないで、風邪にかかるの?
コロナが流行しないで、風邪だけが地域で流行する理由が、僕にはよくわからない。
感染の様式はそんなに変わらないはずなのに。

そもそも、風邪のウイルスって、どっから来るんだ?
オフシーズンには風邪はどこにいるんだ?

風邪の不思議

考えてみると「風邪」これはいろいろなウイルスの総称なわけだけど、これについて、僕たちはほとんど知らないわけだ。
「死なないからいいじゃん」ということで、この分野の研究は、今まであまりすすんでもいなかった。

以前にも書いたことがあるが、人間、この分野の勉強をしなさすぎだったんじゃないか?
hanjukudoctor.hatenablog.com

知的好奇心だけで研究を始めるなら、結果、風邪を解明しようという研究者もいるんじゃないかと思う。
けど、やはりそういう研究がすすまないのには、研究のもつ功利性が影響しているんだろうとは思う。
死なない病気には予算はつかない。予算がつかないと、研究はやっぱりすすまないものだ。

ここからは完全にエビデンスもない与太話であるが…
今年の前半は、現在よりも厳しいSocial Distance政策がとられていた。
七月以降には相変わらずマスク着用などのマナーは守られているものの、少しSocial Distanceが緩和された。
それゆえに、風邪にかかわるウイルスの伝播がはじまったんじゃないかと思う。
でも、数ヶ月ウイルスの伝播から遠ざけられていたせいで、今風邪にかかってる人の発熱が強めにでてはしないか…と思ったりする。*1

これは勝手な想像なのだが、風邪ウイルスとして出回っているウイルスは僕たちが思っているよりもずっとずっと多く、多くのウイルス株が、重複して地域に蔓延し、感冒患者も、同時に複数のウイルスに晒されているのではないか?一つ一つのウイルスの病原性は、それほど多くはないが、ウイルスの多様性で、風邪は伝播しているのではないか?とか思ったりする。多種類のウイルスが人間を薄い雲のように覆っている、状態というのは、僕たちがいままで思っていたよりも多様性が多い雲なのかもしれない。
ただ、そのウイルスの群が襲いかかってきても、ほとんどの人口は不顕性感染や軽症感染止まりで、発症する確率は意外に低いのではないかと思う。

インフルエンザなどは、追跡できるからわかりやすいが、それ以外の風邪のウイルスは、発症確率が低く、散発するように現れるのではないかと思う。
だとすれば、熱がでた人を休ませる、という戦略では、風邪はやっぱり防げない。
新型コロナウイルスのもつ性質を敷衍すれば、当然そうなる。

冬の風邪を引き起こすウイルスは、そもそも夏には、我々の体に住んでいてなんの症状も起こしていないんだろうか?
それともハトやカラス、猫や犬にもかかっていて、伝播の原因になっているんだろうか?

わからない。
風邪のことはわからないが、まあこれらのウイルスは、種族としての人類が克服したウイルスの総称ということなんだろうと思う。*2
その意味では、同じコロナウイルスにしても、旧型コロナウイルスの方が、新型コロナウイルスよりもずっとずっと人間に進化適応した存在ということになる。

*1:Facebookでこのブログをあげていると、「今年は受診抑制しているので、軽症が受診しないからでは?という意見もいただいた。確かにサンプリングバイアスの可能性も否定できない

*2:ウイルスにとっては悪目立ちせずに眷属を広げることができるようになった、ということになる。