以前に「地回りMRの未来」という記事を投稿しました。
現実が追いついてきたというか、ここ数ヶ月は地方都市に住む私の近在では、MRの異動の挨拶回りとか、そんなのでかまびすしかったですね。営業所の統廃合もかなりのもんだ。
はっきり言ってしまうと、そういう異動の挨拶だけで、こちらの診療時間を侵食していることに気づいて欲しいとも思う。地回りMRが廃止されてしまうの……そういうとこだぞ!とも思う。
そりゃ君たちにとっては一大事だろうが、君にとって大事な情報と、僕にとって大事な情報は違う。
MRの中には普通に友人付き合いの人もいるが、関連領域が他社に売却されたため20代半ばで早期退職を余儀なくされた人もおり、それはさすがになかなか辛いことだなあと思った。
ただ、構造的な人員整理は当然今後も続くとは思う。
前にも言ったが、MRは「医療情報の中間流通業者」なのである。
情報がダイレクトに顧客に届くようになった以上、
MRを介した(製薬会社の手によってにフィルタリングされた)データの相対的価値は下落している。
要するにここ近年の情報革命がこの分野にも起こっただけのことだ。
当然その仕事のあり方は変わらなければいけない。
Webフォーラム
こんな窮状の中、当然、製薬会社も時代に対応しようとしている。
販管費を減少させながら、情報の伝達は今までと変わらないように、という努力の結果が、地方のホテルなどで行われていた講演会、地方の研究会の減少と、その代わりにWEBセミナーの増加である。
これは当然の路線変更だとは思うが、製薬会社協賛の講演会などが、地方の医師コミュニティの紐帯の強化に繋がっていたという側面は無視できない。
それに、地方の医師にとっては、こうした講演会・研究会の地方会での発表は「地区予選」的な意味あいもあったと思う。
また、地方の飲食業界にとっても大きな影響があるだろう。
ただ、これをカットすることによって地方のMRの存在意義は決定的に無くなる。
電化製品の修理とアフターケアのために、町内にあった「東芝のお店」が存在意義を失ったのと同じことが、今後は医療業界で起きている。そのこと自体は仕方がないことだろう。
が、地方経済の地盤沈下と、地方発の研究・アウトプットの機会が減る分、中央の情報の優位性がより強くなる。
東京の優位性がさらに増し地方大学はさらに地盤沈下していくことだろう。
双方向性は今後失われていき、地方は一方的に情報を受け取るだけとなる。
草の根の研究・実証マインドが、長い目で見ると低下する可能性は高いと思う。
まあ、地方の研究って、そんな大したことしてないのも事実なんだけど、そういう土壌そのものを根こぎにしてしまった影響を総和すると、結構大きいのではないだろうか、という気もするのである。
* * *
ところでWebフォーラムだが、今までの製薬会社の思考形態をひきつぐ形でWeb化されているので、顧客とのコミュニケーションルートを「囲い込む」ことを当然としている。どの会社も、例えば自社のWebサイトに登録させ、そこから、コンテンツを閲覧する許可を与える、という形態になっている。
これは個人の医師とコミュニケーションをとり「医師をおさえた」MRが優位に立つことができたという、今までの商習慣の延長線上で考えると理解しやすい。要するに生身の肉体のMRの代わりに、バーチャルなMRがウェブサイトで、それを通じて製薬会社は医師とコミュニケーションしているわけだ。
しかし、この情報革命はそもそもMRという情報のキュレーター・仲介役を不要にするものだ。
だから、現実のMRがバーチャルな空間に移動するようなやり方は、中途半端で、うまく行かない。
フラットでオープンなコンテンツの場(プラットフォーム)を全ての会社が利用する形に、いずれなるだろう。
わかりやすくいうと、WebセミナーのYoutubeのようなものができないか、ということだ。
たぶん今のままならm3.comがその役を担うことになるだろうが、Showroomなどの競合企業がこの辺りのプラットフォーム事業に名乗りをあげてもいいと思う。
そういうプラットフォームがあたり前になってくれば、閲覧のターゲットが医学生であったり、患者さんだったりするコンテンツも混在することになるだろう。それはそれで製薬会社にとっても一つのビジネスチャンスになるのではないかと思う。*1
情報の非対称性は今後崩れていく。
製薬会社にとっても、医師にとってもだ。
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今回オススメは「日本4.0」ですかね。
*1:たぶん現行の法制度では、その辺は難しい部分もあるかもしれない。