地域では一番大きな透析施設をもつ当医療法人には、腎友会の支部があります。
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腎友会。腎臓病の患者さんの団体。
かつては政治的に大きな意味をもっていました。
透析黎明期、透析はひどく高額なもので、家屋敷を抵当に入れる覚悟がないと続けられないと言われた時代さえありました。
それが障害認定や、特定疾病療養受領証(マル長)や更生医療など社会制度も整備され、透析の可否にお金は関係ないようになった*1。
各地の腎友会をとりまとめるのが全腎協(全国腎臓病協議会)で、日本最大の患者団体だそうです。
透析への手厚い社会制度の背景には、全腎協の地道なたゆまない活動の歴史がある。
だからこそ全腎協は現在も隠然たる影響力があります*2。
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うちの腎友会では毎年新年の会食を行っており。その日は医療従事者である我々は腎友会の招待を受けて出席します。
今年も参加してきました。
ただ、年々、腎友会、特に役員の高齢化がやはり目立つ。
今年度は、昔なじみの多くの患者さんが鬼籍に入られてしまい、腎友会の役員だった常連の方々はかなり数が減ってしまいました。
そして、役員には皆なりたがらないので、役員の引き継ぎにそうとう悶着しているようです。
僕らの世代が、組織活動をしないことについて
団塊の世代前後の政治集団のロールモデルというのは、学生運動だったり安保闘争であったりします。
腎友会であれ、地域の町内会であれ、昭和世代の集団は似たような性格を帯びる。
日本的な、昭和的なムラ社会。
団塊の世代の方々は、人が多いことに慣れているのは確かで、集団の組織編成に一日の長があります。
勢い、意見の糾合や、組織編成については彼らが先導することになります。
ただ、彼らの作り上げた旧型の集団は、今の時代に適応しているわけではない。
オープンで、フラットな集団性が担保されているわけではなく、
構成員の社会観を反映して、年功序列かつ男尊女卑の傾向はぬぐえません。
少し年少の、団塊ジュニアである僕ら前後の世代は、そういった集団の中での活動に、非常にネガティブな印象をもっていますね。
そもそも政治参画に対して消極的であるし、政治に限らず、労働組合や町内会やPTA活動など、あらゆる集団行動について、勤労世代の中核たる30〜40代は、参加率が低い。
それがために、地域の集団の「組織力」は徐々に失われているように思います。
僕がみる限り「腎友会」も、そうした普遍的な課題に直面しているかのように思える。
これは全国的な趨勢であり、各地の腎友会も、人数を減らし、活動を終了したところも多いようです。
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我々の世代はなぜ集団活動に対してかくも消極的なんでしょうか?
我々の世代を集団活動・政治活動に巻き込むにはどうしたらいいのだろうか?
SNSとか、対面や集会を現代的なものに置き換えて、意思決定の時間的コストを下げる、という手段はそれなりに有効なのかもしれない。
いや、それは、もうすこし下の世代に向いているが、40代には今ひとつささらない気がする。
結局、我々の世代は「狭間」感が強いな…と感じます。
就職氷河期で旧来社会に参画を拒否され、未熟なままで地殻変動を繰り返すジャングルに放り出されてしまった。
集団闘争の経験がない我々は、個別に社会と対峙し、なんとか荒波を超えてきたわけです。
うまくいった人も、うまくいかなかった人も、多くの活動は個人をベースにしたものであり、集団による問題解決、という成功体験がそもそも希薄です。
女性主導のコミュニティ
そんなことを思いながら、今年の腎友会の新年会を眺めていると、今年は、女性の参加が多いことに気がついた。
若い世代は少ないのだが、60代〜70代の女性が、いきいきと楽しそうにしていた。
去年までの腎友会、では世代的な特性として男尊女卑的な傾向はあった。
(田舎であることも関与しているのかもしれない)
その暗黙の了解で、女性は役員になることはなかった。女性はどちらかというと「二等市民」的な扱いを受けていた印象が強かった。
今回男性の役員の多くが亡くなられたため、相対的に女性の参加が優位となった。
結果的にではありますが、女性中心のコミュニティが形成された、ということになります。
政治目的のために組織統率を行う学園紛争型の組織ではなく、共感と相互承認を基礎としたおばちゃんの井戸端会議的な穏和な組織。
組織のあり方をこのように変革し、ゆくゆくは全世代が参加しやすい組織にかわっていけばいいなと思う。
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ただし、腎友会は、我々が主体ではない。
私がこういうことを考えても、主体である患者さん達が、そういうふうに考えてくれるのかどうか。
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オススメは、「もっと言ってはいけない」と「リウーを待ちながら」ですかね。
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これは、今週も更新なし。