半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

「介護保険審査会」のマネタイズ

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家の近所
みなさん、介護保険のこと、どれくらい知っていますか?

* * *

介護保険は40歳になると全員が強制的に加入するものです。
40歳になると、給与明細に項目が増えることで気づくかもしれない*1
ただし、介護保険を実際に「利用する」ためには、申請をして、介護保険の認定を受ける必要があります。

介護保険の申請があると、主治医は主治医意見書という書類を書き、あとは介護保険認定調査員という人やってきて対面の面会をします。
その情報をまとめたものを、介護保険審査会という会議で審査し、介護度が決定されるわけです。

審査会とは、医師や歯科医師・薬剤師・ケアマネ、看護師などの他職種(4人)で合議するものです。
私も参加して5年目になります。
月に2回、一回二時間程度の会議で、30人くらいの案件を合議する。

はっきりいって、あまりやりたくない仕事。
で、医師会の仕事を受けたときに「まあ、若い人はみんなやるから…」みたいな感じで、やらされました。

なんでやりたくないか、というと、はっきりいってめんどくさいからです。

* * *

30件の資料は1週間前くらいに届く。
事前に読み込みをするためだ。
読み込んでおいて、自分なりの結論をだして、それを会議では4人が意見を出し、意見をすりあわせて決定する。
この審査会にでるまでは介護度を決定するプロセスについて正直わかっていなかったので、お願いされてなんとなく始めた当初は、30件の読み込みに時間が結構かかっていた。最初は2時間はかかった。

だから最初は
「こんなんやってられっかっつーの!」と思った。
こちらはクソ忙しいんだ。なんでこんなことに時間をとられにゃいかんのだ。と。
会議そのものも、やっぱり2時間弱はかかっていた。

* * *

私もやっているが、うちの職場からもいろんな職種の人にも声がかかり、4〜5人が行っているようだ。
報酬額は、自治体によって違うが、一回の会議で15000円から20000円弱、という感じ。全職種同じ金額のはずである。
医者にとっては、決して高い報酬とは言えない。
が、給与の安いその他の職種にとってはちょっとした副収入にはなる。
僕は最初、不遜にも「こんなお金でやってられっかよ」とか思っていた。

* * *

2年毎くらいに審査会の4人のグループ(合議体という)は定期的にメンバーをシャッフルしている。
今のグループは、やたらと合議決定が早い。
30件にしろ、40分くらいで終わる(前は倍かかっていた)。

仮に一回の審査会での報酬が15000円だとすると、ゆっくりのグループで、二時間いっぱい使うと、時給は 7500円/時となる。
90分なら 10000円だ。
40分なら、なんと、時給は 22500円となる。45分なら20000円だ。
そうなると……これ、医者の仕事としても、それほど悪くないんじゃないか*2

もちろん移動時間の非効率性もあるし、事前読み込みの時間を勘案すると、とてつもなくラクな仕事ともいえない*3
ただ、医者の諸君は受験強者で、要領はいいはずだ。
私も今は事前読み込みの時間は30分以下で、なんとかなっている。
コツはいろいろとあるが、

  • 合議体のメンバー全員が、早く終わらせようという強い意志統一をしておくことがなにより必要なことだろうと思う。
  • 4人の合議体員で、進行役を決めて順番に案件を割り振るのだが、事前に順番を決め、自分が主のやつはしっかりみておく。そうすれば10件弱の読み込みでいい。
  • 一から介護度を考えるのは大変。要介護3という結論をだすのであれば、この人が要介護3である理由を滔々と論じるより、背理法というか、この人が要介護2以下でも4以上でもない理由を示す方が時間がかからない。
  • 更新申請のときは、前回の審査結果との論理的整合性を示すことで、省力化できる事例が結構ある。
  • 非該当〜要支援1のあたり、それから要介護5のあたりは、そももそ議論の余地がない。そこはざっくりと省略すればいいと思う。それだけでずいぶんと時間が省ける。逆に一次判定で介護1〜3あたりがでているやつは、時間をかければいいと思う。

* * *

どこも、介護保険の審査会は、不人気である。特に医師。
基本的に人手不足の医療業界で、余分な仕事を背負うことをみんないやがるからだろう。
しかし上述したように、徹底的に時間がかからないようにやれば、時給1万以上の仕事にはなる。
そもそも、地域包括ケアシステムを論じるのであれば、審査会を一度も経験したことがないというのは片手落ちであろう。

総合診療医の専攻医の若手って、この審査会参加を義務付ければいいのにと思っています。
Hospital GeneralistにしろFamily Physicianにしろ、介護保険のことをわかっていないGPなど、僕は信用できない。

44歳の自分が「若手」みたいに扱われる現状は、いかがなものかと思うし、非効率な運営もあまり好きではない。
今回の僕の発言はまるで「手抜きのススメ」みたいに見えるかもしれない。
そうではなく、ただ短時間で集中して、気持ちよく仕事を終える方が建設的だな、と思います。

* * *

今回のエントリーは、介護保険審査会のあり方がどうとか、人選とか、決定プロセスなど、制度の根本的な部分に対しての意見ではありません。
そもそも、いろいろ介護保険制度そのものについては、いいたい人もたくさんあろうかと思いますし、僕もどうかと思う部分はあります。

ただ、地域診療・介護は所与の制度の中で回っています。

自分もその中で最善を尽くすだけであり、また制度に組み入れられた人間として、自分の行動は最適化しなければいけない。
医療・介護に関しては、低賃金、非効率性という部分が、社会問題化しているので、自分が携わっている部分だけでも
効率化したらいいとは、思うのです。チリも積もれば山となるはず。

介護保険審査会に関わる人達は、あまりネットにはつぶやきも出てこないので、いろんな意見をいただけると幸いです。

*1:40歳になり、介護保険分ひかれることで、若干歳を感じて凹む、というのはあるあるですね

*2:大学の関連として来てもらうバイトにしろ医師の時給換算で10000円前後という感じだ。(当直などはまた別の計算になる)

*3:事前読み込みを簡単に済ますときは、審査会中にも読み込むのだ。結構集中力が要る