半熟ドクターのブログ

旧テキストサイトの化石。研修医だった半熟ドクターは、気がつくと経営者になっていました

キングコング西野亮廣の演説

ネットで話題になっていたもんだから、近大の卒業式にゲストとして呼ばれたキングコングの西野の演説を観た。

詳細はこうだ。

キンコン西野 伝説のスピーチ「人生に失敗など存在しない」平成30年度近畿大学卒業式

最近Newspicksづいていたのもあり、西野氏の著作も何冊かみていた。
なので、はしばしにでてくる自己紹介やえんとつ村のプペルの話などは、今までにみたことのある情報ではあった。

でも、動画って視覚聴覚に訴えるので、文章とはまた別の情報が付与される。
僕の雑感は以下のとおり。

* * *

冒頭、入場して煽り直して再入場の流れは、これはライブとかに慣れた芸人の面目躍如だろうと思う。これは普通にうまいよね。

話す内容は、事前に構成はある程度決めていたとは思う。が、祝辞としては、いささか推敲の足りなさが気になった。
もともとの芸人=話し上手、というポテンシャルにたよりすぎではないかと思う。原稿がないことは別にいい。だが、早口すぎて詰め込みすぎてるように聞こえるし、重要な言葉を放つ時に、本来必要なタメがない。
ジャズのアドリブでいえば、いささか休符が少なすぎるソロだ。

肝心のラストあたりの時計のたとえを用いた「うまいこという話」であるが、これは別にいいんじゃないか?
そもそも卒業式の祝辞に、そんな凄い話なんてないよ。平均のクオリティよりはずっと上でしょう。
短時間ですっと理解できて多くの人が「ふーん」と思うようなたとえ話。
卒業式の祝辞としては、心に残りやすい。
もし卒業生が、社会人になってうまくいかなくて「あー」って思っている時にこの言葉を思い出し「もうちょっとがんばろ」という人が一人でもいたら、十分なんじゃないかと思う。

メッセージは明確。

  1. 挑戦することをおそれるな。
  2. 挑戦には、しんどい時間はかならずあるけど、それは必ず終わるから。

これから社会にでる若者に向けるべきまっとうでシンプルなメッセージだと思う。

格好としては、黒のモノトーンで、オーバーサイズ気味のロングコートみたいなやつ。ちょっと落合陽一的な。
まあ今時の流行りをおさえている。
でもこれ、ひと昔前のドレスコードやったらあかんやつよな。
もっと昔でいったら、『眠りの森の美女』で大広間で王に謁見するマレフィセントだよ。
記号的には。トリックスター感はない。
でもこれこそが現代のトリックスターなのかもしれない。

* * *

ただまあ、やたら早口で出口が見えない話し方といい、格好といい、基本的に西野氏は「若者に」向けた話をしようという意が強すぎたんじゃないか、とも思う。
基本的には大学生って、同年代との交流が多く「大人」との交流が少ない*1。今から社会に出て、全年代と交流しようとしている卒業生に、特定の年代にしか的をしぼり指向性をせばめた言葉を放つ、のは、あまりいいとは思わない。

それに卒業式は、卒業生だけのものでもない。
父兄や来賓、先生にも響く言葉だと、いうことなし。

というより、西野氏自身がまだ彼のライフステージの中で、すべての年代の、すべての層にひびく言葉をまだ操れていないのではないかと思う*2
今の世の中これじゃあいかんのじゃないか、とか思っている人には氏の言葉は届くけど、マジョリティを動かすには、彼の言葉は鋭すぎるのだ。

少しエッジを削ってでも、言葉は大多数に届かせた方がいい。
これは大学生の時の自分と今の自分をみくらべて、今思うことだ。
昔の方が僕も尖ったことを言えてた。
けれども、尖った言葉は、聴き手を選ぶ。

要するに、西野氏の演説、大学生に向けたもの、と考えれば、全然オッケー。
ただ、デイ0の社会人に向けたもの、と考えれば、すこし疑問符。
社会人の見本として、あの話し方は、あまりよくない。
西野氏、ディズニーに勝つつもりなら、やらなきゃいけないことがあるんじゃないですか?
動員数では勝てないんじゃないですか?
と、動画を観ながら僕が感じたことだ。

* * *

西野氏はネットなどでも好感度が低いので、西野のことが嫌いであれば、なんかまた目立ちやがってと腹が立つのだろう。
でも、まあいいこと言っていると思う。
完成度が高い、とは思わないけど、卒業式への祝辞っていうのは、無条件の善意と応援の言葉なのだから。

僕もいろんなところでしゃべったりするけど、やっぱりそれなりの人数を前にして喋るときは、原稿かっちりでなくていいから予演をしておくべきだと思ったな。

*1:今は変わったのかな?大学時代にいろんな年代の大人と話す経験はしておいた方がいいと思う

*2:老人はあの話し方だと、絶対聞き取れないもの

45歳の早期退職勧奨はあんまりではないか

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なんか剣呑なニュースが飛び込んできたぞ。
headlines.yahoo.co.jp

就職氷河期世代」は、すなわち僕らの世代だ。

私は幸い医学部、つまり資格取得できる学部だったため、幸運にもあまり関係なかった。
が、そうでない学部の同級生たちは就職活動で苦杯をなめていた。

90年代から21世紀にかけて、日本経済は大きく地殻変動を繰り返した(地盤沈下ともいうが)。
日本の企業もその地殻変動による微震や激震の影響を大なり小なり受けていた。
バブル崩壊後、その地殻変動の第一波が、就職氷河期という形であらわれたのだと思う。
企業はついぞ経験のしたことがない地殻変動に動揺し、身を固くし、既存の職員を守るために、新参者に門戸を閉ざした。

その後、地殻変動がずっと続くことがわかっていれば、企業もあんな行動をとらなかったかもしれない。
が、あくまであの時は「日本経済は一時的に冷え込んだだけだ」と解釈されていた。
結果的に、本来もっとも人口が多く層が厚くなるはずの我々の年代の多くは、正職員への道を阻まれた。
まだ「企業に属することが社会に属する」と当たり前に受け止められていた時代。
今ほど、多様性が認められていなかった時代、それはどれほどキツいことだっただろう。

新卒で就職するしないで、運不運の明暗がはっきりわかれたわけでもない。
就職した人間も、様々な目にあった。
新卒で「幸運にも就職できた」企業も激震に見舞われることもある。
会社が船のようなものだとすれば、新参者の僕らは、船に余裕がなくなれば、一番に放り出される存在だった。

僕の大学の同級生で文系だったものは、新卒から同じ企業に勤め続けている者は少ない。
みな、地殻変動をひょいひょいとやりすごして、今に至っている。

あるものは、直下型地震の影響をうけ、吹き飛ばされ、あるものは地割れに呑まれていなくなった。
それは、等しく全ての年代の日本人に起こったことだが、我々はたまたま生活基盤の脆弱な時期にその影響をまともに食らったということになる。

* * *

世代ごとまとめて「人生再設計第一世代」と呼称されるのも、腹立たしいことだよな。
大方間違ってはいない事実も、腹立たしさに輪をかける。
政府にしてみれば「おまえらえらい目にあっているんやから、助けてやろうやないか」という善意から発せられたものではあるが、
これって、例えば未婚の30代女子に「いき遅れ世代」とかいうのと同じくらい、あかんやつですよ!?
ほんとにもー。

* * *

このニュースをうけて、人気はてなBlogger フミコフミオ氏も言及している。
奇しくも、氏も私とほぼ同い年だ。
delete-all.hatenablog.com

私も氏の考えと同じく、自分は今なんとか生き残れているのは、能力ではなく、運の要素にすぎないと思う。
私などは、資格職であること、実家の家業があったりして*1、仕事には恵まれて今に至っているが、自分が今安泰なのは、自分の実力というわけではなく、偶然だという感が強い。

いうなれば、迫撃砲の飛びかう戦場で生き残るのは、実力ではない。
実力は関係ない。
たまたま僕は直撃弾を受けなかった。
それだけだ。
些細なことで明暗がわかれただけなのだ*2

我々の世代は、日本という国の構造的転換点において、なんの武器も持たず放り出された感がある。
数も多かったし、その分大事にもされなかったという恨みもある。
人数が増えれば、その分人権は薄まる。

僕らは自己決定のできない初年兵時代に負け戦の波頭で損耗させられた世代だし、敗兵なので経験の割には実力はついていない。そういう意味も割を食ってしまった。

しかも僕らの世代の前後から、年功序列制度は完全に崩壊した。
初年兵の時代にがんばった「丁稚奉公」にで貯めたポイントには、意味がなくなってしまった。
今ではそれが当たり前で、寿司屋で追い回し修行をするなんてバカのやること、という考えにも理解が示されていたが、我々が新卒者の頃は、そんなことをいっていたら、下駄で殴り飛ばされた。*3
新卒の頃は奴隷労働をさせられ、中堅になったら「新卒を大事に」なんて言われ、中堅になっても雑用をさせられている理不尽!

我々の世代の壮大な失敗、死屍累々の現状を参考に、数年後の学年からは、少しカリキュラムなども、現実に即したものに変わっていったと思う。それはいいことで日本の進歩だとは思う。
が、手当てされずそのままの同級生たちが、年功序列の消えた世界で、そういう若い世代とやりあって押し負けている。
なんという理不尽!

* * *

そんな中、我々に勝算の薄い戦場に行けと命じた、少し上の世代が、
「おまいらは使えない世代で、ろくに就職もできていないやつもいっぱいいるから、政府がなんか、対策を考えてやるよ」
なんて、言ってくる。

反面、大企業では「おまいら生産性も低いし、終身雇用の時代じゃないからね、これからは実力主義だからね」
なんつって、45歳以上をターゲットに、早期退職の嵐である。
旧来の日本的な組織で最前線で頑張ってきた30代、40代は、詰め腹を切らされて、通用しなくなり企業から放り出される。

これでは、あんまりだ。
あんまりだと思う。

でも、僕たちの世代は、負けなれている。
怒りなれていない。
後退戦・撤退戦を戦うことになれきっているからだ。
だから、きっと、寂しく笑うだけなんだろうな。

hanjukudoctor.hatenablog.com

多分、やらなければいけないのは、われわれの世代のうまくいかなかった人生を再設計することではなく、
日本の政治と経済の戦略の再設計だと思う。

*1:それを維持することも大変なことではあるのだけれども

*2:医療においては、大野事件・研修医制度の変換期など、また一般企業とは違う激変にさらされたので、少し話が異なる、まあどっちにしろ割を食った世代であるという自負はある

*3:下駄、は比喩的なやつですよ

PM 2.5

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桜は入学シーズンにばっちりのタイミングであったが、今年の気温は厳しかった。
先週くらいから、喘息のような気道症状に悩まされており、ゆっくり桜を鑑賞する余裕はなかった。

* * *

もともと小児喘息持ちだった僕は、2001年島根県での研修医の時に、当時つきあっていた彼女、の友達と(彼女ぬきで)合コンをした時に*1「子猫もらってくれない?」的なオファーに乗り、当時家賃月2000円、5LDK庭付き一戸建てのトタン屋根の廃屋の官舎*2で、猫を飼い始めた。
飼い始めて 3ヶ月くらい経ち、どうも息が切れる。
ふと酸素飽和度を測ると92%で、なるほどこれが気管支喘息なんだと得心した。アレルギーでも猫皮屑、ハウスダストにばっちり反応し、アレルゲンの怖さを思いしった。

ちなみに2年間の研修生活は、フルタイド、時々パルミコートで乗り切った*3

* * *

その後はながらく喘息は落ち着いていた。
が、風邪を引いたり季節のかわりめだったりアルコールを飲むとやや息苦しくなっていた。

2008年くらいから、夏風邪をひいた後、やたら痰や粘稠鼻水が数週間遷延するようになった。
感冒に伴う急性副鼻腔炎と思っていたのだが、結構あとをひく。
何度か耳鼻科の先生にも診察いただいたが、好酸球副鼻腔炎かも…というコメントもいただいたこともあるので、
おそらくアレルギー機序による一連の症状の一つなんだろうとは思う。
この辺の疾患概念も10年くらいで結構かわりましたよね。

さて、そんなアレルギー体質の僕だが花粉症だけはなかった。
しかし3年前くらいからやはり春先になると、結膜炎・鼻炎が起こる。
ただ最近になるまで自他にむけて否認していた。
俺は花粉症じゃない…
多分ちがうと思う…
ちがうんじゃないかな…
ま、ちょっと覚悟はしておけ…
というわけで、去年くらいからシングレアを試してみている。

しかし、どうもスギ花粉飛散の時期とは微妙にはずれているし、いわゆる黄砂の飛来時期に症状が悪化する*4
PM 2.5による影響なんだろうな、とぼんやり思っている。
実際外来でも、アレルギー体質でない人の、喘息というか気道症状がここ数年とても増えた。
昔でいう「四日市ぜんそく」みたいなものなんだろうな。

しかしPM 2.5がどれだけ関与しているのかって、正直一般診療ではよくわからない。
エレベーターの中の屁みたいなもんで、どうも臭いんだけど、究明もできないし、対策もとれない。

* * *

ま、そんなこんなでしんどかった。
先週は少し風邪を引いたことが契機になり、そこから気道狭窄のような呼吸困難と咳(痰はあまりでない)に悩まされる。
咳をしても痰も喀出するわけでもなく、のどがやけるようで、さすがにしんどかった。
一週間ほど、臥せっていた*5

昨日まあまあ治ってきたなと思ったら、桜はもう葉桜になっていた。
別に自分のくしゃみで桜が吹き飛んだわけじゃないけど、そんな気がした。

*1:あとで彼女に随分気分を害された記憶がある

*2:後に僕の住んでたその官舎は「筋肉ハウス」と呼ばれたことで、どんな家か察してください…

*3:大学院に戻る時に実家に預けたのだが、窓から逃げ出してしまってその後行方がしれない。今でも近所で茶トラをみると胸が痛くなる

*4:西日本の黄砂は東京よりもずっとひどいよね。車とかどろっどろだけど、あれが肺の中にあると思うとぞっとするな

*5:代わりはいないから外来や病棟業務はもちろんする。ただやや引き気味

MRの未来とWebセミナーの今後

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SEではやはりあまり綺麗な写真は撮れませんでした。

hanjukudoctor.hatenablog.com

以前に「地回りMRの未来」という記事を投稿しました。
現実が追いついてきたというか、ここ数ヶ月は地方都市に住む私の近在では、MRの異動の挨拶回りとか、そんなのでかまびすしかったですね。営業所の統廃合もかなりのもんだ。

はっきり言ってしまうと、そういう異動の挨拶だけで、こちらの診療時間を侵食していることに気づいて欲しいとも思う。地回りMRが廃止されてしまうの……そういうとこだぞ!とも思う。
そりゃ君たちにとっては一大事だろうが、君にとって大事な情報と、僕にとって大事な情報は違う。

MRの中には普通に友人付き合いの人もいるが、関連領域が他社に売却されたため20代半ばで早期退職を余儀なくされた人もおり、それはさすがになかなか辛いことだなあと思った。

ただ、構造的な人員整理は当然今後も続くとは思う。

前にも言ったが、MRは「医療情報の中間流通業者」なのである。
情報がダイレクトに顧客に届くようになった以上、
MRを介した(製薬会社の手によってにフィルタリングされた)データの相対的価値は下落している。
要するにここ近年の情報革命がこの分野にも起こっただけのことだ。

当然その仕事のあり方は変わらなければいけない。

Webフォーラム

こんな窮状の中、当然、製薬会社も時代に対応しようとしている。
販管費を減少させながら、情報の伝達は今までと変わらないように、という努力の結果が、地方のホテルなどで行われていた講演会、地方の研究会の減少と、その代わりにWEBセミナーの増加である。

これは当然の路線変更だとは思うが、製薬会社協賛の講演会などが、地方の医師コミュニティの紐帯の強化に繋がっていたという側面は無視できない。
それに、地方の医師にとっては、こうした講演会・研究会の地方会での発表は「地区予選」的な意味あいもあったと思う。
また、地方の飲食業界にとっても大きな影響があるだろう。
ただ、これをカットすることによって地方のMRの存在意義は決定的に無くなる。

電化製品の修理とアフターケアのために、町内にあった「東芝のお店」が存在意義を失ったのと同じことが、今後は医療業界で起きている。そのこと自体は仕方がないことだろう。

が、地方経済の地盤沈下と、地方発の研究・アウトプットの機会が減る分、中央の情報の優位性がより強くなる。
東京の優位性がさらに増し地方大学はさらに地盤沈下していくことだろう。
双方向性は今後失われていき、地方は一方的に情報を受け取るだけとなる。
草の根の研究・実証マインドが、長い目で見ると低下する可能性は高いと思う。

まあ、地方の研究って、そんな大したことしてないのも事実なんだけど、そういう土壌そのものを根こぎにしてしまった影響を総和すると、結構大きいのではないだろうか、という気もするのである。

* * *

ところでWebフォーラムだが、今までの製薬会社の思考形態をひきつぐ形でWeb化されているので、顧客とのコミュニケーションルートを「囲い込む」ことを当然としている。どの会社も、例えば自社のWebサイトに登録させ、そこから、コンテンツを閲覧する許可を与える、という形態になっている。

これは個人の医師とコミュニケーションをとり「医師をおさえた」MRが優位に立つことができたという、今までの商習慣の延長線上で考えると理解しやすい。要するに生身の肉体のMRの代わりに、バーチャルなMRがウェブサイトで、それを通じて製薬会社は医師とコミュニケーションしているわけだ。

しかし、この情報革命はそもそもMRという情報のキュレーター・仲介役を不要にするものだ。
だから、現実のMRがバーチャルな空間に移動するようなやり方は、中途半端で、うまく行かない。

フラットでオープンなコンテンツの場(プラットフォーム)を全ての会社が利用する形に、いずれなるだろう。
わかりやすくいうと、WebセミナーのYoutubeのようなものができないか、ということだ。

たぶん今のままならm3.comがその役を担うことになるだろうが、Showroomなどの競合企業がこの辺りのプラットフォーム事業に名乗りをあげてもいいと思う。

そういうプラットフォームがあたり前になってくれば、閲覧のターゲットが医学生であったり、患者さんだったりするコンテンツも混在することになるだろう。それはそれで製薬会社にとっても一つのビジネスチャンスになるのではないかと思う。*1

情報の非対称性は今後崩れていく。
製薬会社にとっても、医師にとってもだ。

*1:たぶん現行の法制度では、その辺は難しい部分もあるかもしれない。

2018年度の振り返り

年度末の振り返りをやってみようと思います。
んー。アニメとかで、総集編ってやつあるじゃないですか。*1
あれやってみたくなったんです(笑)

たださ、僕のBlog、一記事一記事長いなあ。自分でも読み返してみて長いと思った。

時事ネタ:

公立福生病院の透析の事件について。
hanjukudoctor.hatenablog.com
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自分にも関係ある領域なので、書かずにはいられませんでした。
SNSでも実名だしてますし、組織の長でもありますから、ノー炎上、中道的なことしか言えません。

炎上なくしてバズりなし、バズらずして炎上なし。
しかし数日で、新たな情報が出てくるので、時事ネタって怖いですね。
迎合せず、しかし、変なことも言わず、自分で後悔しないことを書くには、勇気がいるものです。

hanjukudoctor.hatenablog.com
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結局僕は今季ゾフルーザ一度も処方しませんでした。
インフルエンザについては、なんかここで書いたことがそのまま現実になりすぎて、ちょっとびっくりしました。
3月時点で、ゾフルーザ耐性インフルが多数検出され「それみたことか」状態になってますね。

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移行して初めてのBlog記事になりますね。
広島県岡山県の水害で、自分の周りでも大きな被害がありました。
身につまされるものがあったけど、この記事にはなんか、情が足りないと反省。

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これは昨年度の記事ですが、まあ思った通りになったなと思う。
元号」については結局直前まで公表しないというやり方を貫徹しましたね。
IT関係者のことわかってんのかよ、と思う。

組織人として:

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hanjukudoctor.hatenablog.com
見渡しても、医療機関のトップとか、マネジメントに関するBlogってそんなに多くはないです。
こういう記事を増やしていきたいなと思うんですけれども、書くのに力いるんですよね。
だからか他の記事に比べるとやや「アツさ」があると思います。

新しいこと:

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夜間診療
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遠隔診療について。これも当院ではいまだに凍結したままですね。
オンライン診療講習には行こうと思っています。
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これは、意気込んで書いたけど、結局自分に現実改変する裁量もないので、
単なる床屋政談みたいなになってるなーと反省。

その他:

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医療系の金の話って、割と品がない。介護保険審査会の話って、Webではほとんどでてこないので、あえて取り上げたわけです。
これは言いたいことももうちょっとありますけど、まあ。

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MRさんについての話。これも、現実世界が追いついた感あります。
早期退職、整理の嵐が吹き荒れてますね。
地方のMRは、早晩絶滅するんじゃないかなと思っています。
次はWebセミナーの話を書こうと思ってます。

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ACPや死にまつわる話も、かかわることが多く、もっと力をいれて書きたいことですね。

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生活保護に関する話も、炎上するかも…とびくびくしていましたが、これはそもそも
ほとんどリアクションがありませんでした。

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この辺はTwitter医クラの末席で活動している中で少し話題になっていたことではありました。

2018年度、ありがとうございました。
2019年度も、引き続きよろしくお願い申し上げます。

*1:ま、言ってみれば、手抜きの。

医療データの情報共有について その3

続きです。少し間が空いてしまいました。
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  • 医療データをどの医療機関でもシームレスに統合するというのは、現状をみるかぎりかなり難しい。
  • 電子カルテはある種の「鎖国」であり、データのI/Oを想定していない作りになっている。
  • 電子カルテの「本文」であるテキストスタイルの文書は持ち出しにくくまたインポートされない。

もう少し詳しく言えば、電子カルテのデータをごっそり抜き出すOutputは、意外にできる。
採血データ、PACSの画像データなど、薬剤情報などは、抜こうと思えば抜ける。
ただし、外部の情報を電子カルテにインポートすることは、かなり難しい。
忌々しいことだが、電子カルテのデータは、診療行為で日々更新される形でしか入力できないことがおおく、外部の電カルのデータでの診療録をそのままもってはこられない。
多分、この流れはなんらかの強制力がないとベンダーは変えるつもりがないだろう。

でも、多分そこはかなり難しいんだと思う。日本的な合意形成システムでは。
なので、スモールステップを積み重ねる必要があるんじゃないかなと思う。
だから、

とりあえずあのクソ忌々しいFAXをアップデートできないか

というのが僕の提案。
Fax。
今では先進国はほとんど使わないらしい。
多くの医療機関では(うちもそうだが)当たり前のように使っているが、これほど情報漏えいしかねない代物はない。
医療機関間違いならともかく、送信のときに送り先を間違えてプッシュしてしまうと、医療機関でもなんでもないところに、個人情報が漏れてしまう。*1

ついでに言ってしまうと、郵便も前時代的だ。
古式ゆかしい信書システムの上で情報のやりとりが成立する非効率性は、もう少し考えてもいいんじゃないかと思う。
コストもそれなりにかかるし。

Faxの代わりに情報のI/Oを司る端末を義務化する

ここからは、こんな機能があれば便利だな、という私の妄想。

  • それぞれの医療機関には手紙のやり取りのためのソフトをインストールした端末の設置を義務付ける*2
  • 端末はVPN化されたインターネット回線を持つ通常のPCで充分。それぞれの医療機関は固有のナンバーを持つ。医療機関のナンバーは各地域の厚生局が管理すればいいだろう。標榜科のデータも厚生局には揃っているしね。
  • 電子カルテ化されていない医療機関ではこの端末は記録を集積できるファックスのようなものになる。手書きの手紙をスキャンして他の医療機関に送る。もしくはワードのような信書入力機能はソフトウェアに実装してもいい。他所から受け取った診療情報提供書を集積することもできる。メールボックスのように使えれば便利だろうな。
  • 電子カルテには、診療情報をこの端末にインポート・エクスポートする機能を義務化する。小規模のベンダーでインポート・エクスポート機能を作れない場合、電子カルテとこのソフトウェアを同じ端末で共有しテキストのコピー&ペーストができる状態にしておく。
  • 要するに、診療情報提供書の共通規格をこのソフトウェアで走らせる。
  • このソフトウェアは各医療機関で1つ。おそらく地域連携室で管理することになるだろう。

前回述べたように電子カルテは一緒の鎖国のようなものだ。
このソフトウェアは、そのような鎖国的状況の中で「出島」のような機能を果たすものだと考えればいい。

セキュリティにナーバスな電子カルテのベンダーはオープンなネット環境を好まない。
開国にはまだまだ時間がかかる。
この「出島方式」では限られた端末のみインターネット回線にリンクすることになり、セキュリティに関しては一定の担保がなされる。
このやり方であれば現実性は高いと思う。

医療機関の手紙機能を一括して管理する。
郵便ポストとファックスとメールボックスの機能を足したようなものだと思う。

また、このソフトウェアを使うと、エリア内の全医療機関への通達も容易だ。

全ての電子カルテの情報を全国的なデータベースで統括することは理想だが、現実的にかなり難しい。
しかし1人の患者の診療情報を、人の目を通した上でエクスポートする事は、現在の「鎖国」的な電子カルテシステムの中でもできる。
それほど難しくは無いし、コンセンサスは得やすいだろう。
よしんば全国的なデータベースを作るとしても、今ある診療録情報は移行しなければいけないけれども、それすらできないのが、今の電子カルテなのだ。理想形にいくとしても、まずは既存の電子カルテにデータを吐き出させないといけない。
過渡期としてこういうインフラは有効ではないかと思う。

このシステムが実現すれば、ある病院できれいに作り込まれた診療録のテキストデータを別の病院でも使うことができる。
外科の先生にはあまり意味は無いかもしれないが、内科や総合診療科の先生にとってはかなり時間節約になるはずだし、彼らのしっかり書いたカルテの価値も上がる。
そうなると、電子カルテの記載のルールも共通化されていく可能性がある。共通のルールで書き込まれた診療録だと病院を変えても書き直す必要がないからだ。結果として診療の標準化、均てん化、効率化ができればいい。

ということを考えたが、どうか。

多分これなら、500億くらいでなんとかなるんじゃないかと思う。
統一した電子カルテの構築だったら、多分1兆や2兆円ではきかないだろうから。

*1:実際事務のインシデントの上位に、送信間違いがある

*2:義務化が難しければ加算で誘導することになるだろうか

医療データの情報共有について その2

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福生病院の話で、少し間が空いてしまいましたが、前回の続きになります。
hanjukudoctor.hatenablog.com


現状。
おそらくこうあれば便利であろうという完成形。

なんとなく、毎日電子カルテを使っている医師なら、答えはみえている。
ただ、現状と未来の間のギャップは、どうやって橋渡しできるだろうか?

* * *

今の各社電子カルテが乱立した状態から、情報を統一するのは、結構むずかしそうだ。
新たに情報システムを作成・配布する、というのが一番コストがかからないかもしれない。
しかし今のベンダーをすべてぶっ飛ばして、一社統一するのは、政治的に難しいでしょうね。
おそらくすべてのベンダーに共通規格を提示して、I/Oを共通化し統合した運用ができるようにする、日本的な落し所で解決されるだろうなと思います。

いずれにしろ、Input⇔Outputのどちらも、医療データの情報共有に関しては、電子カルテから相当のデータを吐き出し、また流入させることを許す体制が必要になります。
が、電子カルテって、基本的にめっちゃ鎖国なんですよね。
ベンダーは、電カルの端末がインターネットに接続されていることさえ嫌います。
ベンダーの言いなりになっている多くの病院では(うちもそうです)電カルの端末はネット接続されていません。
インターネットでの検索などで、別の端末を用意している始末です。非効率きわまりないね。
村上春樹の小説『ハードボイルド・ワンダーランド』の、壁に囲まれた街のようなもので、
入り口も出口も、そこの住人にとっては見当たらない、というのが電子カルテの世界。

要するに、今の電子カルテは、効率よく統合する以前に、セキュリティという名目でI/Oさえ許されていないのが現状。
この状態から、電子カルテ同士をつなげる、という完成形は、普段日常的に電カルを使っていればいるほど、想像もつかない。

都道府県医師会などを主体として、グループウェアも構築されていますが、あれは電子カルテからOutputは受け取っているけど、電子カルテにInputはできない仕様なので、今の所意味がないと、個人的には思っています。お金の無駄です。

つづく(最近記事が長くなりすぎるので、分けました。しかし、その1を整理した内容でしかないですね)